魔術は見境無し
(sans niveau)
の決定論であるしています。この思考法がBricolage寄せ集め主義につながります。

野牛が男に角をたてたのは呪いがかかっていたからだ
魔術思考に長けるAzande族(南スーダン)。写真はネットから、20世紀初頭の衣装。
 部族民通信ホームページ   開設元年6月10日 投稿2020年6月30日
 
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  科学と魔術の下 (人類学)2020年7月15日
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魔術を取り上げている。魔術とは「凝り固まった非妥協の決定論」を弄している。未開思考の範疇で最も科学から離れる思考がここにある。

Azande族(中央アフリカ)の信心を紹介する。「男が野牛に角をかけられた」他にも屋根が落ちて男は下敷きになった、脳の打ち所が悪く脳膜炎を弊発した。これら事故の原因に野牛、屋根、脳に責任はない。魔術(sorcellerie)が介在して野牛を男に向け、男が下を通る機会を見計らって屋根を落とした...これら災難の取り仕切りには魔術があるとAzande族は解釈する。魔術師が野牛や屋根に指示を入れ男のすきを見計らい、事故を起こすのだと。(23頁)

Entre magie et science , la difference premiere serait que l’une postule un determinisme global et integral, tandis que l’autre opere en distinguant des niveaux dont certains , seulement, admettent des formes de determinisme tenues pour inapplicables a d’autres niveaux.24頁)<

訳を試みる前に;

global(敷延)integral(統合)は具体科学の思考方法を解く鍵となる。魔術を理解するにあたりこれらをどう解釈するか。globalを敷衍と訳した(の図、第4回投稿に掲載)、敷衍とは展開である。展開とはそのものが抱える活動源が外部に発散する自律行為である。Integral統合は拡散分離していた要素を内部に取り込み、活動に至らせる力を育む内部活動である。具体科学の枠内でそれら意味を考えると、モノを統合するとは「イヌを取り纏める理性=630日投稿に説明=である」。integralされたイヌの思想が「タヌキも統合できる、ネコもサルも」と発展し宇宙(の思想)を形成してゆく様がglobalである(630日投稿を参照)。ここの異端の巨魁(Maussなど)は見えない。

global/integralを上記解釈と定めmagie魔術に潜む特異を解釈しよう;

訳;魔術と科学の違いは、前者は統合的integral(事象の取り込み)かつ敷延的global(取り込み事象の展開)を公式決定論として宇宙を見据える。後者は事象を幾つかの水準に分かち、そのうちの限定した幾つかのみ決定論に取り込まず、かつ別の水準域への影響を否定するところである。

魔術は「公式」の展開に見境なしのようだ。(ここでの「科学」には未開人が展開する具体科学をも含む。解説は追記1)

上訳を尊び水牛、屋根、脳膜炎の事例に応用する。

Azande族魔術信仰による解釈ではそもそも男は角で突かれ、屋根の下敷きとなる決定論に支配されていた。その宿命に「敷延」「統合」がいかにして働くかは、水牛の行動や角の大きさ、男の素性、習慣などは本来的に関連が潜み、それらを魔術師が「統合」し、敷延し角で突かれる事故に結びつけた(魔術の宇宙決定論)。

科学が水準を設けるとは。

水準を自律結界として理解は深まる。

野牛の行動と男の素性、行動は別の結界にある。両者が出会って野牛が角を男にかけたのは偶然である。しかし角に突かれて怪我をする、ここに因果律は認められる。屋根下敷きとなって頭を打つ、ここにも因果はある。打ち所が悪いから脳膜炎となる、これも因果。これらの流れの一つ一つを分離し、それぞれに因果causaliteがある、流れを横切る因果は認めないと科学は教える。

魔術では男の数々の事故をアクシデント(突発事故)と見なさず、インシデント(起こりうる事故)とします。そのうえ、それら起因に人が感知できない(魔術師のみが知る)「宇宙決定論」を置いています。

ここでレヴィストロースと部族民蕃神の魔術を巡る解釈の違いを;

尊師にして家元は魔術をモノに託す宇宙論を応用して統合と敷衍を「見境無しに」全宇宙の決定論に応用しているとする。

小筆蕃神はそれをcongruence2の異なるモノを1の思想に関連させる、紐付け)と説明した(菅原道真の怨霊伝説)。このcongruenceなる思考はepistemologie(認識論)として大変美しい。それ故に小筆が魔術解釈に取り入れたのである。皆様はどちらを選択いたしますか。 

用語の確認;

因果律causaliteと決定論determinismeの違いは、因果律は1の原因に1の結果が決まる。複雑系の環境で幾つかの要素がまとまって一の結果に結びつけるのが決定論。暑い、多雨、植物繁茂、これを熱帯雨林気候というが如く。魔術は水準を超した(境目無しの)決定論であり、1の結果には必ず全宇宙的多数の要因が起源があるとする。

 

 

魔術思考の締めくくり文節を紹介します。

on se priverait de tout moyen de comprendre la pensee magique, si l’on pretendait la reduire a un moment, ou a une etape,  de l’evolution technique et scinetifique. Ombre plutot anticipant son corps, elle est , en un sens , complete comme lui , aussi achevee et coherente, dans son immaterialite, que l’etre solide par elle seulement devance.<(26)

son corpssonは前文のl’evolutionを受ける。続くcomme luiluison corpsを受ける。

訳;もし科学に向かう進化の一段階、一時期であると魔術思考を矮小化したら、それについて何事も理解できないだろう。後に進化する科学の様態を予告する、ではなく魔術思考は影なのだ。言ってみれば進化した科学と同じにそれだけで辻褄が合い、また非物質性からして前進し、強固なる体系を成しているのだ

La pensee magique n’est pas un debut, un commencement=中略= ; elle forme un systeme bien articule ; independant , sous ce rapport , de cet autre systeme que constituera la science , sauf l’analogie formelle qui les rapproche et qui fait du premier une sorte d’expression metaphorique  du seconde<()

訳;魔術思考とは停滞するままの初期状態でも何らかの始まりでもない。しっかりした重ね上げの(articule)体系を持つ。その意味合いからして、科学を形成するところの体系から独立している。しいて両者の共通項を挙げるとすれば第一に「形の類推」を基本とする、第二には隠喩表現を重視するところにある。

 形からの類推(analogie formelle)を具体科学の説明(PDF参照)formemorphologie(形態学)などの用語を用いて説明した。魔術思考にもこの「類推」が働く。ではmetaphorique(隠喩的)は何を指すのだろうか。metaphore(隠喩)metonymie(換喩)の反対語となる。換喩は言い換えと訳されるが、複雑系を一の形に言い換える修辞法である。黄色という「複雑系」をレモンなる個体で言い換える表現がこれにあたる。

この正反が隠喩であるならば、一の事象を複雑系に置き換えて表現するとなる。Azande族の引用で「男が野牛の角に突かれた」は一の事象であるが背景に複雑系を想定し、これを事故(accident)ではなく予測される事故(inccident)とする魔術作業を隠喩的表現とする。科学にしてもこの事故を「男の不注意、野牛の行動圏を無視した」など複雑系の説明を取りいれ、inccidentとするかも知れない。ここに相似が見られると家元が指摘したのだ。

魔術思考へのレヴィストロースの結論は;

Au lieu d’opposer magie et science, il vaudrait mieux les mettre en pararelle, comme deux modes de connaissance, inegaux aux resultas theoriques et pratiques.<

訳;魔術と科学を対立させる変わりに、理論背景と実践に異なりを見せる2の理解手段として並列におく事がよかろうと。 (科学と魔術の了)

 

追;前の投稿にて魔術の思考方法(epistemologie認識論)でレヴィストロースへの異論を小筆は開陳した。それを彼はintegration統合の宇宙的敷延とした、これに対してcongruence(紐つけ)の発展と小筆が理解した。そしてこの差異が本章(具体科学science du concret)の第3の主題となる「寄せ集めの思考bricolage」の解釈に大きく影響を及ぼすと、この異論が頭に残っている間に頁を開けて気付きました。寄せ集め思考は713日以降から投稿を予定します。

 


 
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