| 部族民通信ホームページ 投稿2023é年10月15日 開設元年6月10日 |
| |
|
||||||||
|
レヴィストロース « Mythologique » 神話学第三巻 食事作法の起源L’Origine des manière de table3 周期性の確立 |
|||||||||
|
文化の成り立ちが食事、狩猟、世代再生産の道を通って確固な制度に向かう。残るは周期性、規律正しい生き様が残る。 月の周期(女の周期)がいかに生まれたかを説明する神話を紹介する。 M405 Tukuna族La pirogue du soleil太陽神とカヌー 若者がひとり魚釣りに励んでいた。前をカヌーが通りかかる。男が一人乗っている。「何か獲れたか」と若者に声を掛けると返事は「全くだめだ」。男は「乗りなさいここから釣ればよい、少し待てば良い釣りになる」と誘う。若者は舳先に座り、男はそのまま艫に、舳先に声を掛ける、 « Il demanda à son passager où était « le chemin du soleil » et celui-ci comprit alors, bien que l’astre eût prit soin de le rendre insensible à sa chaleur, en quelle compagnie il se trouvait. Ils poursuivirent le voyage en pagayant. Le garçon croyait être toujours en terre, mais en fait, le voyage se faisait déjà dans le ciel. Ils virent un poisson pirarucu long d’un mètre. Le soleil l’attrapa, le jeta dans la pirogue et le cuisit à la chaleur qui rayonnait de son corps » (110頁) 拙訳;舳先の若者に<太陽の通り道>を知っているかと声をかけた。自身が発する熱気を蓑に隠して、誰かと悟らせまいと太陽神は工夫していたが、この問いかけで若者は誰のカヌーに同乗しているかを悟った。しばらくは二人して漕ぎカヌーは進む。未だ地上、川の上と若者は信じていたがカヌーはすでに天空に浮かぶ。舷側を1メートルほどのピラルクが遊泳する。太陽神はすかさず捕らえカヌーに取り込んだ。己が発生する熱で大魚も瞬く間に調理された。 さし出された魚料理を食するも、すぐに満腹となってしまった若者。太陽神は食べる量が少ないぞ、頭を下げてくれと求める。若者のうなじを叩くと « des cafards en quantité » 幾匹もの「ふさぎ虫」がはき出された。Voilà la cause de ton manque d’appétitこの虫けらめがお前の食欲を無くしていたのだと太陽神。若者は皿の魚に再挑戦し、ピラルクを平らげた。調理で外された鱗とヒレを注意深く太陽神がかき集め、放り投げるとそれらは再生し魚に変わった。 この神話M405はM354モンマネキを彷彿とさせるとレヴィストロースは説明、解説を読む; 魚の創造と再生(モンマネキは魚を産む月桂樹を探し出した)、有能者に対する機転の効かない者(太陽対若者はモンマネキ対インコ嫁の弟と対比される)、カヌー航行での位置(舳先に劣者、艫には上位者)。モンマネキは魚の捕り方を知らないが調理する火を所有する。太陽は魚を巧みに捕るが火を持たず自身の発する火で焼く。モンマネキと太陽には2重反転が窺える、ここに同系統の神話であるとする。 太陽が空の航行を始めた、魚が獲れ始め人々は満腹になる。周期性の効用である。 M392 転がるがん首と月の起源 Kuniba族 (75頁) 娘が毎晩、誰とは名乗らない男の訪問を受けた。娘はアカネ染料(genipa)で青の目印を男の顔に塗った。翌朝、名乗らぬ男とは兄と知った。村人は罪人(兄のみ)追いだした。対敵する族の縄張りに迷いこんで男は首を刈られた。もう一人の兄が男のがん首を見つけ抱えたが、首は食い物飲み物をしきりに求めたので、兄は放り出して逃げてしまった。 |
|||||||||
| 色々な物体の中から月を選んで、女に月経を起こす。 南米先住民、生々しい想像力に脱帽 |
« La tête parvint en roulant jusqu’au village et voulu pénétrer dans la hutte. Comme on lui refusait l’entrée, elle envisage l’une après l’autre plusieurs métamorphoses : en eau, en pierre, etc. Finalement, elle choisit la lune=中略=Pour se venger de sa sœur qui l’avait dénoncé, l’homme changé en lune l’affligea de la menstruation » 訳:転がりながらも弟を追いかけ村までたどり着いたがん首、妹の小屋に入らむと試みた。しかし内からは拒否の悲鳴。居場所をどこにも見つけられないないがん首は、物に変身すると決心した。水、石などなどを思い浮かべて、最後に月を選び天に昇った。秘事をばらした妹には月経が起こる身体にして復讐した。 Incesteをして月の起源とする神話は新大陸で多く伝承されている、転がるがん首が月の起源とする地域はブラジル北部を東西にまたがる(レヴィストロース)。M392はincesteとがん首の両要素を月と月経の起源に取り上げている。Kuniba族の居住地はブラジル北部、がん首とincesteの交差する地域であろう。変身する候補を幾種も選び改める理由はそのたびに「人間に利用されてしまう」。最後に月を選択するモチーフは別神話でも語られる。 M393 月の起源l’origine de la lune Cashinawa族 (76頁) (うっかり兵士が月に変身) 隣接する部族が戦闘状態に陥った。ある男が敵戦士に出会って逃げようとした。相手の甘言に言いくるめられて、敵戦士宅の「よその男が好きな」妻を訪問するはめになった。男は結局、首を刈られ捨てられた。同族の戦士が首を拾うと、しがみつき、さんざ迷惑かけて放り出され、人として居場所を失い、変身しようとするがその物を探りあぐねる。 でまず果物、大地、樹木、水、魚、毒、蛇などを自ら挙げ、同族者に伝える。しかしこれら全てが人に利益を与える、あるいは人から殺されるなどを思いつき、決断できない。太陽?の自問、奴らに暖かさを与えてしまう、雨?川の水かさが増え魚が繁殖し、お前達がタラ腹になるから嫌だ…思い着いたトドのつまりは « J’ai une idée. De mon sang, je ferai l’arc-en-ciel, chemin des ennemis ; de mes yeux, les étoiles ; et de ma tête, la lune. Et alors vos femmes et vos filles saigneront. Pourquoi donc ? La tête ne répondit « pour rien » 訳;思いついたぞ、まず私の血が虹になるのだ。それはお前らの敵どもの通り道になる。目は星に変わる。この首は月となる。そしてお前らの妻、娘が血を垂らす。なぜそそうなってしまうのかの問いに首は「何の役にも立たないから」と答えた。 「転がるがん首」の復讐で何にも役に立たない月経が発生した。女が周期性を獲得するに貢献し、ひいては女を文化に連れ込む事になった。 |
![]() Codeは符丁、Codageは符丁進行 となるが、音楽ではコード進行。曲 想を形成する。天文、地理、肉体 社会、倫理の範疇でいかに符丁が 発展していくかを示している(クリッ クで拡大) |
|||||||
|
本書137頁の表を写真にした。 モンマネキ神話と周辺神話から集めた複数シーケンス(状況)をcode(符丁)として抽出し、その進展が各項目の横列となる。縦軸は先住民の世界観を羅列し、横軸は周期性を獲得するまでの進展(codage)となる。これらが周期性を核とした符号進行である。 第一項目の周期律は。 Code Astronomique天文の符丁と訳す。月、太陽、夜、昼が先住民思考の対象として選出されている。列の左lune absente, éclipse……と読める。月の不在、月蝕。原初世界には月は「創造」されていなかった。Éclipsesは創造されて後に不気味な月蝕を起こす(近親姦の暗示)。月創造の前段に近親姦が発生し、その結果転がるがん首に果てた者が、生ける人への復讐から月変身を選んだ。 月に対して太陽は初めから存在している。Soleil fixe(右)とは太陽が動かない、年がら年中、天頂に座しまして毎日が昼間だった。あるいは常に隠れている。 2列目左にlongue nuit長すぎる夜。右にlong jour長すぎる昼とあって、それぞれが一列目の月不在と太陽固定に対応している。一列の中央にはphases(月の相、満ち欠け)、2列中央は(夜と昼の規則ある交代alternance régulière de la nuit et du jour)とある。ともに天文符丁における周期性を表す。 好ましくないAstres太陽と月の固定状況から、周期性太陽月の交代が生まれる。 第2項はcode géographique地理的符丁である。 同じく周期律を確保するに地理が必要である。 一行目右がproche(近い)、左にlointain(遠い)。 モンマネキ神話 では4例の獣婚譚が述べられる。地に住むカエルおよび地虫は近い(狩り行きの途中、近すぎる)。さらにカエルの「食い物(ムカデミミズなど)が悪い」、「草刈りのやり方が人と合わない」(地虫)。姑こと預言者に「この様では社会の周期性が形成できない」追い出されてしまう。別の2例は鳥、これらは形態的不完全で追い出される。遠すぎて同盟を結べないとの示唆も4例目(金剛インコ)に叙述される。アサワコ神話は頼もしい若者と麗しい娘の恋愛物語であるが、二人の居場所が遠すぎた。 この項の列中央にはカヌー、その行き交いが遠近地との仲介として文化の範疇となる。2列目中央にfleuve à double sens(上流も下流もない2方向で流れる川)とある。これが下流(aval)と上流(amont)を結ぶ文化の仕組みなとなるはずだが地霊は制作できなかった(Warrau族の言い伝え)。 以下code anatomique身体符丁, code sociologique社会符丁、code éthique倫理符丁とつづく。いずれも周期périodicitéを念頭においた文化形成の基盤を訴えている。 上説明のCode展開を図式化した掲載図(117頁)。文化成立のあり方を略図にしている。掲載写真を参照。 表題はstructure des mythes à la pirogue céleste(天をかけるカヌー神話の構造)となる。社会形成の鍵は「周期性の確立」である。3重の三角形で構成される。外側三角は婚姻の周期性を表す。左は近すぎる結婚、右に遠すぎる結婚の特異点がある。頂点は遠すぎず近すぎもない婚姻=mariage bien mesuré(三角形の頂点)距離が上手く計測され、周期性が保証された結婚。距離とは地域と社会位置が含まれる。 モンマネキが人の女としてはじめて娶った嫁(上下分離、経血垂れ流し)は近すぎる結婚である。レヴィストロースはこの理由を説明していないが、近親姦にまつわる不吉を具現した異形(その暗喩)としていると小筆は解釈する。麗しのアサワコは遠すぎる関係なので同盟に至らなかった。 周期性を安堵するほどよい距離の結婚とはなにか; 多くの社会、民族で実行される交差イトコ婚についてレヴィストロースは「親族の基本構造」の中で「世代をまたぐ財の流通確保」の社会規則と言える。周期性を確保するから仕組みが安定する。遠い(カエルや地虫)、近すぎる(同族近親姦)ではない距離が同盟を継続できる 中の三角は天空の周期、かつては太陽と月は年に一回の交代だった。半年が真っ暗で自身のひねった糞を踏みつける始末、残る半年は灼熱、頂点に心地よい気温が日夜の交代で確立した。最中の三角は漁労の多寡、中庸とは年に一回の毒流し漁が周期を保証するとの図となります。 右に左に一歩を踏み外せば、自然に逆戻りの危うい文化、これらが読める。 |
Code進行を図面化した原図 (117頁) ![]() 部族民(蕃神)が翻案して 文化発生範囲=楕円の網 を設けた。クリック拡大 |
||||||||
|
星の起源と漁労の始まり M362 origine du baudrier d’Orion, オリオン座三つ星(肩ひも)の起源 (婚姻規則の軋轢に死ぬ、漁労を告げる星に変身) Mucushi族は今のベネズエラに居住していた。 3人兄弟が住む。長兄は結婚しており、次男は未婚ながらも人物として良くできている。末子は醜い。それ故、次兄は末子を(兄嫁にそそのかされて)殺すと決めた。口実を設け木に登らせ果実を取らせた。末子が枝にまたがり無防備となった機会をとらえて刺し殺した。死骸は地に落ち、とどめに両脚を胴から切り取って捨てた。 しばらくのして殺害の現場に戻って、義理の姉と出会った(rencontrer)。 « A quoi peuvent donc servir ces jambes, dit-il, elles ne sont bonnes qu’à nourrir les poissons. Il les jeta à l’eau où elles se changèrent en poisons. Le reste du cadavre fut abandonné, mais l’âme monta au ciel et devint trois étoiles d’Orion » (35頁) 訳;義姉に「こいつの脚をどう処分するの、魚の餌にするしかない」けなしながら池に捨て、脚は魚に変わった。胴体は放置され、魂は天に昇ってオリオン座三つ星になった。 オリオン三つ星と漁との関連、それが夜明け前に地平に現れると漁の季節を告げる。 醜い(si laid)だけでなぜ弟を殺害したのか、さらに義姉は夫を伴わず一人で殺害現場に現れた。義姉に死骸の見せつける次兄の行動には念が入っている。死骸を確認し、義姉は脚を水に捨てさせた。この処置は(死体が)歩き回りを防ぐためである。殺害現場で二人が=rencontrer出会った=のだが、この動詞には「偶然」と「示し合わせて」の出会いに分かれる(辞書Robert)。投稿子は後者、示し合わせて、の意をとった。 神話は二人の関係に何も語らない。 (神話において罪は)女が犯す、この観点から彼ら行動を考察すると; 長兄の存在が薄い。Polyandrie(一妻多夫)が背景にあると思いつく。レヴィストロースは悲しき熱帯Nambikwara族でこの風習を報告している。弟を追うようにして妻が一人で森に入る、夫は見て見ぬ振り、弟と妻の姦淫を黙認する。長兄の嫁を弟達も妻として共有する(妻が交叉いとこであれば弟も夫になる権利があった)。そう考えれば長兄の不在理由に辻褄があう。しかし嫁は末弟を「醜い」から嫌った。この場合、「勧奨される姦淫polyandrieの拒絶」と「兄弟殺しの命令」で義姉に罪が掛かる。Mucushi族は絶えて久しい、polyandrie風習を持っていたかは検証できない。 食事作法の起源
L’Origine des
manière de table 4 周期性の確立 了 |
![]() オリオン座三つ星。オリオン 座は南米ではMucushi族が 伝える脚を切られた男。三つ星が 夜明け前に地上に現れると漁猟 の始まり。挿絵は生よ調理から クリック拡大 |
||||||||
| |
|||||||||