部族民通信ホームページ 投稿 令和7年6月5日  発足開設元年6月10日
 
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蕃神(ハカミ)義男
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レヴィストロース構造人類学 Anthropologie Structurale 4ヒトの由来   
   

2025610日)レヴィストロース構造人類学 Anthropologie Structurale IX章は神話を主題とし、エディプスŒdipe神話と北米プエブロ族神話を比較している。古代ギリシャ詩人ソフォクレス(伝前496406年)が謳う「宿命」を近世フロイトはコンプレックスと指摘し、レヴィストロースによって人の「生まれの由来」に発展した。Œdipe 神話の「ヒトの生まれ」を構造主義の視点からの展開を試みる。

本投稿のあらまし:神話はヒトの思想=表象=の反映である。Œdipe エディプス神話のもう一つの主題は「人の生まれの由来」はフロイトによって繰り返され、北米プエブロ族にも同様の神話が報告されている。レヴィストロースはこの「由来」「ヒトは他者(女)から生まれるのか、己から生まれるのかに発展させる。宇宙論の己生まれも現実の女生れも、一つの事象の正反であると分析する。その事象とは「己の生き様」。よって宇宙論が正しいとレヴィストロースは結語する。

 

1 神話はヒトの頭の中の表象から生まれる。 

フロイトは「コンプレックス」を持ち出して、エディプスの心の奥を解析した。 « On n’hésitera pas donc à ranger Freud, après Sophocle, au nombre de nos source du mythe d’Œdipe » エディプス神話の資料としてソフォクレスに続いてフロイトを採り上げる、ここに躊躇はないと思う。(240頁)

レヴィストロースの論点は: « Ce principe est bien illustré par notre interprétation du mythe d’Œdipe qui peut s’appuyer sur la formation freudienne, et lui est certainement applicable. Le problème posé par Freud en termes « œdipiens » n’est sans doute plus celui d’alternative entre autochtonie et reproduction bi-sexuée » 240頁)この原理(神話を個々の出来事に分解するのではなく全容として捉え、そのように語り継がれている事=前文から)はフロイト説に立脚するŒdipe神話の本書の解釈がまさに当てはまる。更にはフロイト説にも適応が可能であろう。フロイトが「エディプスコンプレックス」として提唱した課題とは、人は大地から生まれるのか(autochtonie)、男と女の交合の果てに生まれるかの(bi-sexuée)拓一回答すら超えている。

« Mais il s’agit toujours comprendre comment un peut naître de deux : comment se fait-il que nous n’ayons pas un seul géniteur, mais une mère, et un père en plus ? » (同)一人の男がなぜ二人から生まれるのか、それを如何にして理解するか、一人女の胚ではなく母と父の種で生まれるーなぜそんなことが起こるのかが課題なのだ。

部族民: Œdipe神話のフロイト解釈では男は一人で生まれる。Pueblo神話では「族民」は地底に住む惨めな「己」が地上に上った。自己に成るべく(ヒトらしき姿に生まれ変わるために)試練を経る。この過程でヒトは己から生まれるを教わる。ここでレヴィストロースはヒトの生まれは「己からか他者からか」の提題に向かう。

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 « Que signifierait donc mythe d’Œdipe ainsi interprété à l’américaine. Il exprimerait l’impossibilité où se trouve une société qui professe de croire à l’autochtonie de l’homme de passer, de cette théorie, à la reconnaissance du fait que chacun de nous est réellement né de l’union d’un homme et d’une femme. La difficulté est insurmontable » (239)

アメリカ(先住民)風に翻訳されたエディプス神話(プエブロ族神話)は何を伝えかけるのか。男の生まれは大地からと信じる社会には、この論理を乗り越え我々の誰もが一人の女と男の結合から生まれ出るとの(現実に合致する)認識にはたどり着かないであろう。乗り越えられない困難がここに横たわる。

部族民:時空隔たる二の部族が男の砂芥生まれを伝える。この宇宙論から、実際に見える生まれの現実に傾く社会などありえない。

« Mais le mythe d’Œdipe offre une sorte d’instrument logique qui permet de jeter un pont entre le problème initial naît-on d’un seul, ou bien de deux ? et le problème dérivé qu’on peut approximativement formuler : le même naît-il du même, ou de l’autre ?  Par ce moyen, une corrélation se dégage : la surévaluation de la parenté de sang est, à la sous-évaluation de celle-ci, comme l’effort pour échapper à l’autochtonie est à l’impossibilité d’y réussir »

しかし視点を替えればエディプス神話が、解き明かしの論理手段を提供してくれる。そもそもの問題点は(人は「大地からか女か」ではない)一人で生まれるのか二人からか。これを起点として浮かび上がる次の提題は「個は己から生まれるのか、他者から生まれるのか」。この進め方を採ることでとある連関性が浮かび上がる。緊密すぎる血縁関係と疎遠な血縁関係を向き合わせ見ると、男の大地生まれ(の信心)から抜け出ようとする努力が、それなど達成できるはずのない不可能さに対峙する(諦観)と同じである。

« Nait-on d’un seul, ou bien de deux ? ― et le problème dérivé qu’on peut approximativement formuler :  le même naît-il du même, ou de l’autre ? » 239頁)人は一人から生まれるのか、二人からか。この問題は絶妙の近似で以下に公式化される、人は己から生まれるのか、他者からか?

レヴィストロースは続ける。

« L’expérience peut démentir la théorie, mais la vie sociale vérifie la cosmologie dans la mesure où l’une et l’autre trahissent la même structure contradictoire. Donc, la cosmologie est vraie » 

経験は理論を否定できる。しかし社会生活では宇宙論が前者(一人生れ)にしても後者(二人生まれ)も同じ構造体の逆向きであると暴いている。よって宇宙論が正しい。

部族民:この文が本節の核心であり、最も解釈に至り難い論理でもあります。宇宙論(己生れの思想)の「正」向きと現実(二人で生まれる)の「逆向き」は本質として同格であり、それでも「思想」が示す向きが常に正しいのはなぜか?ヒトは女の股から生まれ落ちる、これが現実。宇宙論ではヒトは大地から這いずり上がる。落ちると上がる、この生誕運動の対極性が目指す現実の中心は「己、その生き様」となります。すると「生きる現実」は「生きる様式の宇宙論」に組み入れられる、よって宇宙論が正しい。

次の数節は「宇宙論」神話の追加解説; « Ouvrons ici une parenthèse, pour introduire deux remarques. On a pu négliger une question qui a beaucoup préoccupé les spécialistes dans le passé : l’absence de certains motifs dans les versions les plus anciennes (homériques) du mythe d’Œdipe … »  (Page 240)

ここで2点に留意するために括弧を解こう。古型のエディプス神話には幾つかの筋道が欠けているーこれが神話研究者を悩ませていたのだが、その問題「起源の神話とは何か」を(上記の構造主義的視点を採れば)無視できる。

« La méthode nous débarrasse… à savoir la recherche de la version authentique ou primitive » この進め方(もともとの正統的神話とは何か)は私を困惑させる言ってみれば起源を探す試みだが、それは原初の神話でしかない。

フロイト論を確認しよう; « Ce principe est bien illustré par notre interprétation du mythe d’Œdipe qui peut s’appuyer sur la formation freudienne, et lui est certainement applicable. Le problème posé par Freud en termes « œdipiens » n’est sans doute plus celui de l’alternative entre autochtonie et reproduction bisexuée. Mais il s’agit toujours de comprendre comment un peut naitre de deux »

Œdipe神話の我々の解釈はこの原理(神話は宇宙論の同時的反映)で説明できるし、これがフロイト公式に重なりその説を補強する。エディプスコンプレックスとは「大地生まれ」と「両性が世代を再生産する」の択一ではない。ヒトはなぜ二人から生まれるのか、如何にしてこれを理解するかに行き着く。

故にヒトは己から生まれる。宇宙論 « cosmologie » 思想が正しい。

レヴィストロース構造人類学 Anthropologie Structurale ヒトの由来 番外 (530日)

 



















ソフォクレス、フロイト
レヴィストロースの宇宙論と現実
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宇宙論のまとめ