部族民通信ホームページ   投稿2023é年10月15日  開設元年6月10日
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レヴィストロース « Mythologique » 神話学第三巻

食事作法の起源L’Origine des manière de table 1 モンマネキの失敗

 
 

食事作法の起源
1968年刊
表紙絵は夜と
昼(Mandan族)

本巻のあらまし:前半は南米先住民tukuna族「モンマネキ」神話を基準とします。制度=定期性、継続性が社会の土台がそれら神話の伝えかけとなります。後半には北米に移り「月の嫁」が基準神話となります。

前文として幾行か:レヴィストロース自らの声を引用します、

本巻「食事作法の起源」の冒頭に主題を «  Ce mythe M241Haburiの冒険) traitait d'une grenouille ravisseuse d'enfants. Qu’un festin de miel mène à sa perte. Sous une forme très affaiblieet de manière épisodique, on trouve ces motifs associés dans un Tukuna grâce auquel notre enquête pourra prendre un nouveau tour » この神話(2巻に収録されるM241Haburiの冒険)は子供をかどわかすカエルの話だが、蜜の饗宴(ふんだん)が喪失に繋がる様を語っている。本巻は幾分か弱く変わるも挿話的にその主題を伝えている。Tukuna族の神話にこの主題が見つけられ、そのつながりを起点として、人(レヴィストロース)は神話紹介の新たな局面が展開できる。第2巻は文化から自然が逃げる、容易に蜜も収穫できた黄金時代の喪失を語る巻―とレヴィストロース自ら語っている(写真は第三巻の冒頭)

もう一言;

 « En vérité depuis le début de ce livre, nous navons discuté qu’un seul mythe. Tous ceux que nous avons successivement introduits lont été dans lintention avouée de mieux comprendre celui dont nous étions partis : le mythe tukuna M354, qui raconte les mésaventures conjugales du chasseur Monmaneki » (本書163)

引用文の訳;実際のところ、本書では始めからある一つの神話のみを語っていた。次々と続いて開示された神話とは、それを始めとして出発した神話をより正しく理解するためで、その意図の元に引用された。最初の神話とはTukuna族の神話「狩人モンマネキと嫁問い譚M354」。

 
 

Tukuna 族
ネットから
 

M354 Tukuna族 モンマネキの失敗

奇怪な婚姻5例が語られる;

モンマネキは人類を滅亡させた大洪水の生き残り、祖母と共に土着神 « démiurges » に掬い上げられ助かった。今はもっぱら狩りに明け暮れる日々を送る。狩り場への行き帰り、(樹木棲の)カエルの跳ねる様を観察するを常としていた。ある日戯れにカエルの穴に小便を垂らした。翌朝、いつもの道ばたに見たのは、

 « Un jour, une gracieuse jeune femme parut à cet endroit. Monmaneki s’étonna qu’elle fut enceinte : Tu es en cause, car tu pointais ton pénis vers moi » (本書17頁)木立ちに立ちすくむは妙齢婦人、際だつその麗しさも水にしたたるかの構えでモンマネキに向かう。恨みがましく「身ごもるこの子の父はお前だ。男根を妾(わらわ)に向けたではないか」告げた。

(向けるだけで再生産ができたとは)仰天するモンマネキ、責任に迫られ娘を配偶に迎えた。「道ばたで拾った嫁ゴは何とも綺麗なことよ」祖母は喜んだ。

狩りに向かうも夫婦は一緒。仲むつまじく過ごした。ある日、嫁が用意している調理の壺を姑が何気なく覗くと、ゴミ虫やらムカデがうごめいていた。 « A la vue des insectes, la vielle s’écria :  Pourquoi mon fils se salit-il la bouche avec cette ordure » 虫を見た途端「こんな汚い物を息子に食わせていたとは」ヒトの食物に整えるため辛子をたっぷりかき混ぜた。

その夕 « la femme fit chauffer sa petite marmite personnelle et commença à manger, les piments lui brulèrent la bouche. Elle s’enfuit, et sauta dans l’eau sous la forme de grenouille » (同)いつもの通りに鍋を火にかけ料理して、その食物を口にした嫁の口が辛子で焼けて、食卓から逃げ出し沼に飛び込みカエルに戻ってしまった。

 

祖母と息子の一家にカエルが嫁いで、婚姻同盟が結成された。曲がりなりにも人の社会が始まった。しかし食事の中身(昆虫食)が文化規範から外れていた。「食事作法」が姑祖母のメガネに適わなかった。文化創成にて妥協を許さない老婆ちょっかいで離縁となった。人とカエルの一粒種は嫁が取り戻した。モンマネキは世代再生産に失敗した。

 

妻問いは続く;

Arapaco鳥(蜜吸鳥、写真)が樹上に休むに目をとめ「ひょうたんを満たすだけの樹液をおくれ」と呼びかけた。その夕の帰り道、道ばたにたたずむ姿がとっても魅惑的な娘がモンマネキを見つめる、彼が脚を止めた訳は娘の風情とその肩の瓢、軋み塩梅で椰子酒がたっぷり充満すると分かる。彼はその娘と婚姻を結ぶが、姑の介在でまたも破局する。顔姿は見目麗しいのだが両の脚が醜かった。 « Elle était ravissante, mais avait de vilains pieds. La grand-mère du héros s’écria qu’il aurait pu mieux choisir ! Vexée, la femme disparut » 嫁を見るやいなや、孫はもっと良い嫁を選べたはずだ。嫁は当惑のあまり逃げてしまった

 

離縁の直因は醜観とされるが、背景には樹液をたやすく手に入れる境遇となった息子モンマネキへの戒めとも読める。貴重な食材は人が額に汗、苦労して得る、これが文化支配の食事作法の一環にあたる(蜜から灰へのMaba神話と共通する)。主題は後の婚姻譚にも受け継がれる。

モンマネキは健気に妻問い努力を繰り返す。

3話は「地虫」との結婚。健気に働くのだが、姑に雑草を狩ってと命じられた。地虫は地下に潜って根っこを食い切った。草は黄ばんでいるがその場に立っていた。姑はこの怠惰女と追い出した。地虫と一緒になっていたら、雑草狩りの手間が省けたのだった。

レヴィストロースは次の4話(金剛インコ)をして「これは獣婚世界から人同士の婚姻を繋ぐ中間的経緯である」。人と人の婚姻同盟への架け橋(transition)としている(21頁表、写真)。










 

2番めの妻はArapaco
脚が醜いの理由で追い
出された
(本書挿絵)

















 

3神話比較
クリック拡大
 

4話の金剛インコとの婚姻同盟;

空を飛ぶ金剛インコに「せめて幾ばくかのビールを恵んでおくれ」と声をかけた。その夕、綺麗な娘が桶を肩に、村の入り口で待っていた。インコ娘とモンマネキは婚姻に至る。破局の理由はモロコシ一本でビール桶5本が溢れるまで出来てしまうインコの(高等)技術を知らずに、モロコシが山と残っているを見た姑は「下準備をさぼった」と曲解し、怒ったから。インコ嫁は沐浴に出て帰らず飛ぶ空からモンマネキに謎の言葉を伝える。

 « Si tu m’aime, suis-moi ! Trouve le laurier dont les copeaux se transforment en poissons » 「私を愛するなら、私の言葉通りにして。この世のどこかに「月桂樹laurier」がある、その木屑が魚に変わる」(19頁)

 « Monmaneki courut en tous sens à la recherche du laurierIl abattit vainement plusieurs arbre à coups de hache. Enfin, il en trouva un dont les copeaux devinrent des poissons quand ils tombèrent dans l’eau »

モンマネキは四方八方、月桂樹を探し回った。空しく幾度も木を切り倒したはてに、やっとの事でその木を見つけ出した。幹を穿ち水を貯め(カヌーの製作法)木屑を浮かべると魚に変わる。この世に生まれたばかりの魚、獲る技法はカヌーのアカ水からすくい上げるだけ。とある男が義弟(インコ妻の弟)にちょっかいを入れて、カヌーから放ち魚は川に逃げ出した。これが魚とカヌーの起源、簡単には魚を漁獲できない由縁がカヌーからの魚逃げ出し。

モンマネキはインコ妻を探す旅にでる。

義弟をカヌーの舳先に着かせ己は艫に。 « Enfin, ils arrivèrent au pays où la femme-ara s’était réfugiée. Toute la population accourut sur la berge pour voir la pirogue et ses passagers, mais la femme de Monmaneki se cacha dans la foule » 川を下ってインコ妻の村にたどり着いた。 (この世で初めての) カヌーを見るため多くの村人が岸辺に寄せた。インコ妻は女の姿に化けて群衆に紛れる。

めざとく姉を見つけた義弟はインコに戻ってその肩に留まる。一人で操るカヌーが転覆し川に投げ出されたモンマネキもインコに変身して妻の肩に留まる。(カヌーpirogueは舳先に助手を配置する、艫の漕ぎ手のみでは安定しない事情を語る) 。しかし縒りは戻らずインコ姿で村に戻った。漕ぎ手を失ったカヌーは沼に流され湾処(ワンド、魚が卵を産み付ける溜まり)に変身した。

 

この第4話が何故、獣婚と人と人の婚姻の中間に当たるのか。前の3話はカエル、蜜吸鳥、地虫との婚姻で、5話は「人の女らしき」との結婚だから位置としては中間、それだけでは説明が足りない。レヴィストロースも頁を割いて語るが、簡潔に答を探る。M1神話が答を示唆する。

M1(及び派生)。母子婚を犯したバイトゴゴは崖の頂上に取り残され、ジャガーに助け出される。ジャガー宅では妻(人の女)に邪険にされ、習い覚えた弓矢で彼女を射殺し、村に戻る。洪水が村を襲い彼と祖母だけが生き残った。

M354モンマネキ神話4話。きっかけは獣(金剛インコ)婚を否定する老母の差し金。インコは魚の創造方法を教えるが、義弟の裏切りで魚が川に放出されてしまう。妻を追って川を下る。モンマネキがインコに変わることで同盟一旦成立するが

 

M1M354を比べると;

近親姦に対して獣姦

ジャガー(狩りの技法を伝授)に対してインコ(魚の創造を教わる)、

洪水により村が全滅、インコとなって人間界から逃避。

両神話ともにきっかけの禁忌犯し、主人公の疎外、文化の伝授が共通。旧来(自然、連続性を)環境の尾を引く人間社会を否定し、真の文化に移行せむとする訴えかけが共通と認められる。

この内容は続いて紹介するアサワコ神話とあわせて、自然から文化への図表PDFを作成した(本書117ページの原図に一部注釈)。クリックを。

モンマネキ神話を伝承したTukuna族をWikipediaに訪ねると、ブラジル(アマゾニア)ペルー、コロンビアでかつて有力先住民であった。現在も同地区に4万を超す人口を数える。族内婚を実践している、言語的には孤立しているとある。Tukana族の居住地はアラカルトで。

モンマネキの失敗 了 (2023年9月30日)

 
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