| 部族民通信ホームページ 投稿2023年9月15日 開設元年6月10日 |
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| Univoque Equivoque 片務 失務 (親族の基本構造から) |
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| 結婚Univoqueの関係して夫(妻)が不倫したらEquivoqueに陥る、カミュ流には婚姻の死 |
親族の基本構造Les structures élémentaires de la parenté の婚姻制度を解説しているさなか、レヴィストロースは聞き慣れない« univoque » なる語を唐突に持ち込んだ(同書207頁)。 « Les paires sont univoques au lieu de d’être réciproques. C’est-à- dire qu’elles unissent seulement les hommes d’une des sections avec les femmes de l’autre section » 訳:対はunivoqueの関係にある、相互的(réciproque)ではない。と云うことは、全セクションの中の1セクションの男が、別の特定セクションの女を娶とる 仕組みは、このやり方でのみ、安定することとなる。 語 « univoque » をスタンダード辞書に求めると「包括的な」とある、一つの語が一の意義を持ち明瞭であるとの定義も。しかしこの意義と交換を安堵する仕組みの関係が読み取れない。別の辞典(哲学系)を紐解くと; Un terme ou un concept appliqué dans le même sens à des choses différentes. Ainsi : « animal », appliqué au poisson et chien ; « chien » appliqué à un boxer et à un setter. 訳:用語あるいは観念、異なる物事を一つの語で当てはめる。例えば「動物」は魚にも犬にも当たる。「犬」はセッターにもボクサーにも当たる。仏語では魚も「動物」、魚と犬を切り取り集める語が「動物」となる。一の語で複数を集合する、この場合は動物が2の生物体をまとめた。こうした用い方を « univoque » とする。もう一つ; Une relation dans laquelle un terme entraine toujours le même corrélatif ; s’il y a réciprocité la relation est biunivoque. (いずれもDictionnaire de la langue philo. Puf) 一つの語が言い指す相方に常に同じ連関を巻き込む関係。もし相互性(réciproque)が認められれば « biunivoque » とされる。 そしてもう一例; Univoque : une relation dans laquelle chaque antécédant détermine un seul conséquent. Lorsque cette relation est réciproque, chaque conséquent n’ayant qu’un seul antécédent, on la dit biunivoque. (Dictionnaire de philo. Nathan) 上流側が下流側の反応を唯一として決められる関係。下流が、唯一の相方上流に対峙している場合は相互 « biunivoque » とされる。具体性が出てきた、まとめると; 1 語としてのそもそもの意味(明瞭、一語一義) 2 語の持つ整理能力。遣われ方の適宜を得れば、抽象概念が群体を形成する(animalの用法が典型例) 3 示唆、問いかけなどの行動で、対峙者反応に統一性を求め、それが達成する状況を表す。この用法は言葉の意味から離れる。 3の説明を合体してMurnginの婚姻の状況に応用すると: 1 上流(のサブセクション)が与え下流(サブセクション)が受け取る(婿)。 2 下流側には責務が発生する。その責務は常に一定している(婿を送り出す)。 3 上流側には運動に伴う責務は発生しない(レヴィストロースは双方向réciproqueではないとしている) この責務を部族民は「片務」と訳したい。婿交換での片務とは何か? 上引用の文節(上引用、208頁)でレヴィストロースはMurngin族(オーストラリア先住民)の婿交換の仕組み、とくにその運動様態を解説していた。同族は8のサブセクションが4サブセクションを有する2部に分かれ、婿(同族はmatrilocal母系居住であるので実際は婿)を対峙する相方サブセクションに贈り、この交換運動が順繰りに族内を周回する。起点になって最初に贈ったサブセクションは、16回の交換活動のつまりに、婿が貰えて一巡が終わる(婿と子の交換がそれぞれ8回)。 |
![]() Univoque,Equivoque 意味論、語の作用、社会での意義をまとめた。クリック拡大 |
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| Univoqueは片務 Equivoqueは失務 と考えれば理解も早い |
サブセクションは必ず対峙する相方に婿を贈り、その相方は貰った相手に贈り返すのではなく、さらに奥に控える相方に贈る、この一方通行の順列を守らなければ巡回交換は成立しない。これが片務の1。 婿を受け取る側は相応の交叉いとこ娘をあてがわなければならない。どのサブセクションも必ずいとこ娘を婿に充てる、片務の2。 本書「親族の基本構造」を紹介するに当たり、部族民は「交換の不均衡」を強調した。それは; 文化の支配下(社会)では «l’individu reçoit toujours plus ce qu’il ne donne, et en même temps, il donne plus ce qu’il ne reçoit » (35頁) 個は常に与えるよりも受け取る。同時に受け取る以上に与える。与えるも貰うも不均等が生じている、これは二重不均等 « double déséquilibre »、ここに交換の原理が認められると判定した。 この不均衡を安食堂での場面になぞらえた。相席となった見知らぬ者同士がワイン一酌を差し合う風景を交換になぞらえた。それで場が和む。不均衡を強調した、この場合の不均衡はワインの量ではない。ワインを注いですぐに注ぎ返すのはいささか不躾。一時は、貰ったままで飲む緊張を感じてしまう、相手は奢ってやったの優越が。これが不均衡です。 部族民は « univoque » の反対語を考える。 « réciproque » は « biunivoque » の同義語。 « équivoque » が正しい反義語となる。辞書を開くと「不明瞭」「一語多義」と説明される。しかし例文が出て来ない。仏語哲学辞典のPufにしてもNathanにしても同じで、この語には哲学系は冷たい。そこで、 Equiは同じ、対等を意味する、 « équilibre » 均等は用例。Vocは音を促す « vocal » などのvoc。この2語を合わせれば「別語ながら同じ発音を促す」ーとなる(Robert Méthodiqueから)。同音意義 « homonyme » と同義語であるともこの辞書に。この説明はそのとおりに受け止めれば良い。カミユに耳を傾けよう: « Chaque équivoque suscite la mort : le langage clair, le mot simple, peut sauver de cette mort » 一つ一つの多意義語が死を招く。明快な単純な語がその死から抜け出せる(A. Camus L’homme révoltéから)。語用の曖昧さを死に結びつけるカミユ、さすがに格好良いけど人類学にどのようにして使えるかに考えあぐねる。引用しやすい用法を求めて文献を渉猟すると(手持ちの小辞典の頁をめくる作業); « La condition rationnelle du vrai système des connaissances humaines impose une telle condition [rendre la science indépendante de ses applications], sans laquelle nos conceptions fondamentales auraient nécessairement un caractère équivoque » (A. Comte, Cours de Philos) 人間の正しい認識体系は以下の理性条件を要求する。それは「科学とはいかなる派生、応用から独立する」仕組みである。その仕組なくしては基本概念そのものが多意義化(un caractère équivoque )してしまう(Auguste Comteオーギュストコント1779~1858年、仏の哲学者)。 分かりにくい言葉 « équivoque » その用法の人類学的解決がここにあると頭にひらめいた。上文をこう読み替えよう: <人間界の諸規則の正しい運用とは、いかなる妥協、すり替えを認めないことに尽きる。もし本来趣旨が捻じ曲げられたら規則、制度は « équivoque » 曖昧となって、社会制度の運用不可に陥る> レヴィストロースが婚姻制度とはかくあるべしと « univoque » 規定した逆方向からの説明です。これをカミユ「さもなくば死」と合わせると、制度の「死」に読み替えられる。そして « équivoque » には、社会学的に「失務」なる語を当てたい。 制度は « univoque » 片務性を強制する。婚姻、親族構はコントが伝える「科学」と同列で、曖昧さ回避する。結婚して相手が浮気したら夫の失務、« équivoque »状態なので破局を迎える。制度は « univoque » 片務を前提に運用される。それでも« équivoque » 失務の陥穽に落ち込む時もある。「親族の基本構造」興味深い例が載る。 |
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Bantou族(アフリカ南部)の « lobola » を紹介する。家畜、主として牛の数頭分になり、一般に « prix de fiancée » (男が相手家族に支払う)婚約金とされる。Netでもそのように紹介されている。 Lobola is an essential custom practised in most South African cultures,. The groom’s family traditionally pays the bride’s family with a certain number of cows. Lobola is a fundamental requirement that any man must fulfill when marrying into an African family. (Threestreammediaから)。婿家庭が嫁家庭へ幾頭かの牛を贈る習慣(要訳)。 この説明では個から個へ渡される財貨(牛)。この財の取扱に社会への責務は見えない。人類学の現地報告(1930年代)は幾分異なる; « Le lobola est ne peut-être une dot ― puisqu’il ne s’accompagne pas la fiancée, mais entre dans la famille de celle-ci, ni un paiement ; en effet, la femme ne fait jamais l’objet d’une appropriation : elle ne peut être vendue, ni mise à mort : elle reste placée sous la protection jalouse de sa famille, et si elle abandonne son mari pour un juste motif, celui-ci ne pourra prétendre à la restitution du lobola »(同書535頁) このlobolaは贈り物ではないだろう。なぜなら(嫁となる)婚約者に付属するものではなく、彼女の家庭に入るから。支払い代の意味も持たない。なぜなら(それを払ったとしても)妻は夫の所有物では全くないし、夫から悪く扱われもしない、彼女は婚家の家庭、(嫁へ)やっかみの籠もった空間に位置しているだけ。もし彼女が正当な理由で夫から逃げたら、夫はlobolaを返還してくれと要求できない。 後文にて娘とlobolaやり取りの周回の様が語られ; « La raison essentielle , pour laquelle on ne peut voir en lui un paiement, est qu’il ne sera jamais consommé. A peine reçu, il fera l’objet d’un remploi pour le frère ou le cousin de la jeune mariée. »(同) Lobola が支払い代と見なされない理由はそれは決して消費されないにつきる。それを受け取るやいなや、花嫁の兄弟あるいはいとこに回って、彼らのlobola 支払いに充当される。これら記述で判断出来るのは; 花婿が花嫁家に贈るlobolaは財産(牛)ながら、それを受け取る側、嫁贈り出し元には自由に使えない制約(社会性)が付随している。嫁贈り元がその財を自家の男子の嫁手当に用いる、この財は部族内で流通させる前条件が決められていて、自家消費するのは法度と伺える。社会を安定させる「供託金」の性格が強い。 Bantou村落では妹を嫁に出した兄は、供託金を繰り回して嫁をもらえる。嫁と家畜財が逆の周りで周回する仕組みで、画像的に捉えると女子一方向に周回し、その逆回りに牛の群れが動く―二重の巡回列を頭に描くと良い。財の支払い側にも受け取り側にも片務がかかる。受け取り側の片務は嫁待遇の気を遣い、もし婿(婿家族)の過ちで嫁に逃げられたら責任は婿側が背負い込む(lobolaを取り戻せない) 上記とは逆の状況では;« en cas de séparation dont les torts seraient reconnus incomber à la femme » 落ち度が妻側に帰せられ、婚姻が維持できなくなった場合に両家に危機が迫る。 « univoque » で安定していた交換状態が « équivoque » 嫁出し側の失務状況に急変してしまった。 婿が嫁家に要求するのは「lobola牛の返却」。嫁側の対応はlobolaを息子に妻あてがうために使ってしまったから手元にない。自家の手持ち牛で返却すると貧困に陥る。それなら嫁兄がせしめて得た妻を「嫁の代替」として贈れと迫る。嫁兄の妻、義姉こそ私の肉(ma chair)だ―との言い回しも用意されている。 Bantou語は義姉に特別の呼称を用意する。 « grande moukonwana » 、この語は訳しようがないから「オオアネ様」とする。オオアネとくだんの男(夫の妹の婿)の日常での接近はは禁忌視される。言葉をかわしても、近寄っても疑われる。しかし状況が変った、その妻をよこせと義弟が迫る。騒動が始まる。嫁の実家側としも新妻は再生産の要、取られたら次代の設計が不透明となる。駆け引きが始まり、嫁側に代替品(妹か)が用意できればそこで落ち着くとか。 一の « équivoque » が両家を巻き込む騒動に発展する。Lobolaが相片務 « biunivoque »の責務を両家に押し付けているからである。相片務の中身を確かめる(スライド)。 « L’équivoque est la mort » 失務は死だ!カミユの預言はBantou族婚姻 « biunivoque » 、強固にして硬直化した制度を見破ったといえる。 |
![]() バンツー族の奇妙な風習Lobolaは結婚する両家にBi-Univoque双片務を押し付けている。日本になぞらえれば「離婚したら結納金を返す」システム 男が支払う牛は質草、男の責で女が出戻れば流れる |
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(2023年9月15日投稿 |
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