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何が始まるのか、男の影に不安におののく嫁候補。「まだ祝言を挙げていないのに」身構えた。でも日本人に限らず旧大陸系の若者が踏み外す、欲望任せの不謹慎を新大陸先住民は最も卑しむ。彼らはとっても礼儀正しいのだ。ポツリの月の話しかけはなんとも奇妙でした。
「キミ、噛むときにポリポリ音を立てられるかな」
「あらまそんな話を聞きたかったの。チョットがっかりだわ。そうなったら抵抗しようと思ってたんだから」
「早とちりしないでくれ、分別自制の作法ではなく食事作法の相談なんだ」
「音を立てるかですって、アラパホ村では食べる時ポリポリ、ツルツル、ガッツガツは未婚娘の大事な教育よ」
その4沈黙して食うのは規則違反。
食事の時は声はあげずに噛み音だけを盛大にがアラパホ作法なんだそうだ。
「安心した、実はこの天空の作法も音立てバンザ~イみたいなところがアルんだ」
「天も地も同じ作法なら人情も同じね、一安心したわ、月の世界で生きていけそう、でもあなたが守ってくれないと心配だから」
「任せてくれ~」で無事、相談事はまとまった。食べ比べ宇宙選手権には「盛大にパクついてやるわ」娘は出場の決意を固めた。
太陽神もカエルに同じく作法を示唆した。でもカエルは「ポリ音が好まれるのか」驚いた。カエルの作法はモグモグ、音立ては御法度なのだから。「なんてヤバンな所なんだ」意気がそがれたカエル。そして翌朝、
舅姑の臨席を仰いで娘とカエルの食べ比べが始まった。
「イチバンサ~ン」カエルは食材を口にするけどクネゴチャと舐めるだけ。ポリ音が一向に出てこないうえ真っ黒な脂汁の垂れ流しまでしでかした。舅姑は顔をしかめた。
「ニバン~サ~ン」アラパホ娘の番だ。給された乾燥肝臓を手にとって全塊を掴んで大口に一気に入れ、「さあ、やるからね~」。前歯に挟んで奥歯が噛みつく。ポリポリ音は平素の親のしつけの賜物、ポリがボリバリ、バボリボバリに聞こえるほど盛大に噛音を立てまくった。
舅らの耳にはポリボリバリの豪快さがことさら優しかった。「ユーショウ~、ニバンサ~ン、アラパホ娘」塩煎餅の噛み音が耳に快い日本人に、娘の大口、ポリポリ快挙は賛同できる。無事月の嫁になったとさ。了
(2023年10月)
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