部族民通信ホームページ   投稿2023é年10月15日  開設元年6月10日
主宰蕃神(ハカミ)義男        部族民通信  ホームページに 人類学のページに  読み物のページに  
神話学食事作法の起源 娘とカエル食べ比べ  
 

Arapaho娘の後日譚
天の家には住みきれず
子を連れて地上に戻
った。Arapaho族は月
の子孫と威張っている

 

新大陸先住民の食事作法とは食べ方の食卓マナーではない。何を食べるのか、食べてはいけないのか。どのように採取、収穫された食物なのかを含む広範な規律の概念を包含する。そしてもちろん、食べるときに音立てる?立てない?まで入る。ちなみに日本人がざる蕎麦食べる時、ツルツルとやるね。あれ西欧人、新大陸人(あとになって移民したほう)から顰蹙を買ってしまう(本当に嫌な顔される、侮蔑だね)。
まあ、蕎麦屋にフランス人が入ってきてそば食う姿見たこと無いから安心だ。キミがなんかの事情でパリのホテル・リッツなんかで食事をするとして、スープが出てきたら一口二口でスプーンを置いたほうが身のためだよ。どうしても日本人はツルツルになってしまう。周囲から白い目を向けられたくなければ、絶対に、音は立てないほうがよろしい。
ところが、新大陸でも先住民だったら盛大にツルツルとやると尊敬される。そんな食の広範な作法の話、本書「食事作法の起源」で原点をまとめた。ちなみにゴリラとチンパンには食事作法の精神を全く無い。人をゴリチンと分ける確実な手段に「食事作法」が挙げられる。そこを突き詰めると食事作法は文明確立の絶対条件とも言えるね。
レヴィストロースが本書の題名をこれとした理由を噛み締めながら、以下を読んでくれ。

M354(モンマネキの冒険Tukuna族)、M425、月の嫁(北米Arapaho族)が伝える食事作法 :

モンマネキの冒険(神話M354Tukuna族の伝承):モンマネキと老母だけが大洪水を生き残り、孤立した生活を営む。モンマネキは狩りに出る。道すがらカエルを見つけ悪戯心で棲む穴に尿を引っかけた。翌朝「お前がイバリを掛けたから妾(ワラワ)は子を身ごもった」娘カエルが迫った。カエルを嫁にした。破局はすぐにやってきた。カエル嫁が用意する食事はムカデ、ゲジのかき集め。姑が「こんな食事が文化に昇華する訳がない」

食事作法その1 ゲジゲジなんか食ってはならない。
その2汗水垂らして収穫しないとだめだ!(引用は省いたが、妻のミツスイ鳥がたちどころに蜜酒を作ってしまう。姑が食事作法違反と怒って追い出した)

異種同盟(動物との婚姻同盟)が4例続いて、全て食事作法に合致しないから姑に破談とされてしまう。4例目(金剛インコ妻)にて魚が創造される。人は漁労を知らない、食べられない。5例目にして人間の女を嫁にした。この女が漁労に長けていた。しかしなんと、身体を上下に分割できる。岸辺に下半身を置いて血を垂れ流す(経血、この頃はまだ月毎のさわりはない。毎日が垂れ流し)。血におびき出され寄り来る魚を川面に浮かんだ上半身がすくい取る。漁獲された魚は姑に食材として否定される。
その3 経血を帯びた食材は食事作法の規定外である。上下分割嫁は追い出された。

月の嫁(M425、北米プレーンズArapaho族伝承)月の神は人間女を選んだ。太陽神(兄)はカエルを伴侶と選んだ。カエルとアラパホ娘、いずれが天の家の嫁にふさわしいか、食べ比べで選ぶ手筈となった。食材はバイソンの乾燥肝臓。

月は娘にあてがわれたテントにするりと、音も立てずに潜り込む...

 

ミツスイ鳥
モンマネキが欲しい
蜜酒など直ぐに作って
しまう。姑はそれが
作法に違反なんじゃ
で追い出してしまう。
本書挿絵
   

何が始まるのか、男の影に不安におののく嫁候補。「まだ祝言を挙げていないのに」身構えた。でも日本人に限らず旧大陸系の若者が踏み外す、欲望任せの不謹慎を新大陸先住民は最も卑しむ。彼らはとっても礼儀正しいのだ。ポツリの月の話しかけはなんとも奇妙でした。

「キミ、噛むときにポリポリ音を立てられるかな」

「あらまそんな話を聞きたかったの。チョットがっかりだわ。そうなったら抵抗しようと思ってたんだから」
「早とちりしないでくれ、分別自制の作法ではなく食事作法の相談なんだ」
「音を立てるかですって、アラパホ村では食べる時ポリポリ、ツルツル、ガッツガツは未婚娘の大事な教育よ」

その4沈黙して食うのは規則違反。

食事の時は声はあげずに噛み音だけを盛大にがアラパホ作法なんだそうだ。

「安心した、実はこの天空の作法も音立てバンザ~イみたいなところがアルんだ」
「天も地も同じ作法なら人情も同じね、一安心したわ、月の世界で生きていけそう、でもあなたが守ってくれないと心配だから」
「任せてくれ~」で無事、相談事はまとまった。食べ比べ宇宙選手権には「盛大にパクついてやるわ」娘は出場の決意を固めた。

太陽神もカエルに同じく作法を示唆した。でもカエルは「ポリ音が好まれるのか」驚いた。カエルの作法はモグモグ、音立ては御法度なのだから。「なんてヤバンな所なんだ」意気がそがれたカエル。そして翌朝、

舅姑の臨席を仰いで娘とカエルの食べ比べが始まった。

「イチバンサ~ン」カエルは食材を口にするけどクネゴチャと舐めるだけ。ポリ音が一向に出てこないうえ真っ黒な脂汁の垂れ流しまでしでかした。舅姑は顔をしかめた。

「ニバン~サ~ン」アラパホ娘の番だ。給された乾燥肝臓を手にとって全塊を掴んで大口に一気に入れ、「さあ、やるからね~」。前歯に挟んで奥歯が噛みつく。ポリポリ音は平素の親のしつけの賜物、ポリがボリバリ、バボリボバリに聞こえるほど盛大に噛音を立てまくった。

舅らの耳にはポリボリバリの豪快さがことさら優しかった。「ユーショウ~、ニバンサ~ン、アラパホ娘」塩煎餅の噛み音が耳に快い日本人に、娘の大口、ポリポリ快挙は賛同できる。無事月の嫁になったとさ。了
(2023年10月)

 







天の家ってなんて
野蛮なんだと驚いた
(ネットぴよのカエ
ルから拝借)
   
頁トップに戻る