| 部族民通信ホームページ 投稿2025é年10月30日 開設元年6月10日 |
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レヴィストロース 野生の思考La pensée sauvage1 前文 具体科学、近代科学 |
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1 先住民の科学思考 具体科学 (本頁) 2 モノと言語 工事中 3 魔術(モノの因果律)工事中 4 寄せ集め(未完成の科学技術)工事中 5
宇宙森羅の分類(トーテム)工事中 に分けて取り上げます |
![]() 野生の思考ポケット版 |
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![]() レヴィストロース |
La Pensée Sauvage 野生の思考 別の名は「野生の三色すみれ」解説 1 具体科学
野生の思考の紹介を2023年10月に起稿、HP、Youtubeに投稿を試みた。25年10月に再解説を試み投稿する理由は23年版を読み返し、捉え方と解釈に浅さが目に付く。新たな解釈を盛り込み、ここに改訂版の発表を試みた。
初版出版1962年Plon社 投稿子の所有はAgoraポケット版2019年印刷
表紙 中折り(Maurice Merleau-Pontyに)中表紙 第一章Science du Concret 具体科学
総論 具体科学と近代科学
本章では未開とされる世界各地の先住民の思考手順を「具体科学Science du Concret」とする。近代科学とそれを比較し「優劣を基準に」両者を論ずるは誤りと指摘した。その説を展開するために新たな比較手法の用意している。先住民の思考の具体科学の原理は;
1モノは主体、単属性。モノ自身が判断、行動する
2一元因果(事象、出来事の因果律は単性)
3世界森羅の一方向性(モノ現象の分類Classementの特異)
4 Langue言語に於いては個別語彙の充実ーを挙げている。
現代の思考方法を「近代科学」と規定し比較は;
a未開思考と現代のそれは思考を差し向ける方向が異なるだけで、未開人(先住民)は現代人に劣らない理性を発揮し、世界の森羅を解析している
b未開思考とは人類のそれまでの叡智を、新石器時代に大成した知性。その根底は「モノが主体」で、その思考原理は現代人にも受け継がれている
皆様の理解をより深めるため序文(部族民の独自解釈)を設ける。それを踏まえて主題に分けて解説を試みる。主題は具体科学、抽象語と具体語、概念分断(意味論)、形態学、Congruence(異種同定)、分類、魔術、トテム分類の論理。
序文;
具体科学を現代科学(Sciences Modernes)と対比させる。
具体科学の始まりを新石器時代に求める。それ以前から人類が積み上げていた叡智を新石器人が承継、新たな知見を加味し大成した。新石器に先立つ旧石器時代は数十万年(後述)続いた。その重さを加算して、人類の永き理性の歩みの結晶が具体科学であるとする。 « L’homme du néolithique est donc l’héritier d’une longue tradition scientifique » (page 28) 新石器人はかくも永い過去からの科学遺産を継承している。人の思考の根底にその原理(具体科学)は今も宿る。
旧石器の始まりはオルドワン石器をもってする、300万年継続した。よってヒト理性は300万年に重なる層の積み上げであろう。本書の文列を紐解くと「前新石器」思想とは何かに見当はつく。近代教育を受けた「文明人」にしても、未開とされる具体科学の「旧態」を近代理性の真横に抱えていると判断する。本書に於いてレヴィストロースは幾つかの文節にてこの実例に言及している。
先住民思考を劣性と決めつけ現代人の思考と断絶して説明するは無意味。これが本著の主張となります。具体科学をより良く理解するに現代科学の定義をここで;
それは「誕生して数世紀しか経過していない」の経緯を説明しているのみ(現代科学は何かをこれ以上は広げていない)。投稿子は「コペルニクスが開きデカルトが裏打ちした科学」と判断する。
「見た目」で太陽、惑星は地球を回る。天動説は具体科学の思考方法から抜けだせないから、見た目通りの観察で「天球が回る」にとどまる。それでは惑星の天空一点での停止、それに続く逆行が説明できない。プトレマイオス(古代ギリシャ)は「逆行運動を説明のため、中心からずれた導円と、その導円上を公転する円を導入し…」(Google Ai)複雑化させているだけで、その二重円運動の根拠はどこにも見あたらない(プトレマイオスの惑星2重回転の説明を別ページにしている、ここをクリック)。
コペルニクスは惑星運動の央点に太陽を置き、水金地火の順に惑星を置く。すると停滞、逆行などの不規則運動を説明できるとした。新たな見えない規律が天球を支配する、これをして現代科学の濫觴とします。この「見えない何か」は後に(140年後)ニュートンによって「万有引力」と解明された。
そして具体科学Science du Concret:未開人の科学です。旧石器以来の人類智慧も受け継いだ新石器時代に集成された思考です。モノをそのまま具体的に受け入れる。宇宙森羅を見た目聞いた耳で思考する。モノは「主体」で自己表現がモノの有り様、本質であるとの原理が前提となります。
(Concret具体は哲学用語。La notion s’applique à ce qui est donné dans l’expérience経験に導かれた心情。Dictionnaire de Philo, Nathan)
レヴィストロースはそうしたモノの様を具体とした(モノを主体sujetとすると読めるのだが、本書は具体Concretで通し、「主体科学」の語は用いられていない )。例を挙げると「雷」は具体であって己が自律し行動の意思を表現する。本邦にあって意思は「怨念」が一般だろう(道真の怨霊が雷に化け復讐)。「対立する村長を誘拐するために魔術師が仕掛けた雷」と南米先住民Nambikwara族が語った(構造人類学から)。
具体科学を育んだ新石器時代、どのような仕組みからかくなる智慧の集大成に至ったのか;
« C’est au néolithique que se confirme la maîtrise des grands arts de la civilisation, poterie, tissage, agriculture, et domestication des animaux. Chacune de ces techniques suppose des siècles d'observation active et méthodique, des hypothèses hardies et contrôlées, pour les rejeter ou les avérer au moyen d'expérience inlassablement répétée » (page27) 文明を構成する巨大要素の修得、それはまさに新石器時代に始まった。土器、織布、農業、動物の家畜化。いずれの技術も幾世紀にわたる熱心な観察と、方法の模索。大胆な仮説の囲い込みと追いかけ。放り出すか実用に持ち込むかは、幾度もの弛みない繰り返しを経ての決断だった。
« Pour transformer une herbe folle en plante cultivée, une bête sauvage en animal domestique, faire apparaître chez l’une ou chez l'autre des propriétés alimentaires ou technologique qui, à l'origine, était complètement absente, ou pouvant à peine être soupçonnées » (dito)
貧相な野草から農作種に変える、野生の獣を従順な家畜に育てる、あれもこれも食材に持ち込めるなり、使いこなせるまでには、もともとはそんな可能性など全く浮かべない素材、あるいは微かな可能性を見いだしたところからの出発でした。
農耕の品種改良練り上げの長い道のり、豊かな地も水も足らなかったかもしれない。そうした状況で草粒を、ときには有毒の根塊を食料に変えていく。毒は毒で狩りに用いるし儀礼に飲用するなどもあるから、毒材の選択改良も。これらにはまさに科学的精神とつきっきりで好奇を注ぐ欲望に根源がある。
部族民:「熱心な観察と方法の模索。仮説の囲い込み…」が何を表すか。新石器人は優生改良なる遺伝子知識を持ち合わせない。野生を栽培種家畜に変身させる根拠とは、対象には本来、有益な資質が備わると確信していた。対象(野生小麦コメ、野牛、野ブタら)の観察から始まる。対象素材のあり得るべき主体を「あぶり出す」試行であった。
余談:「遺伝に優生劣勢がある」(すなわちモノは遺伝作用の客体)と人類が気づくにはメンデル(1822 ~84現在のチェコ)を待たねばならない。
もう一点;「微かな可能性を見せた à peine être soupçonnées =前述」の意味するところを旧石器人が草花、動物を見極め、内側の「主体」を突き詰める(あぶり出す=前述)と読みます。別の言い方であまたの標体から優等生の候補を分別する。今流「森羅からビックデータ」を取り込み整理した。(2025年10月15日)
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![]() バルザックの一文が巻頭を飾る「この世には心の底での篩分けでは、野蛮人、農奴、田舎者しか住まない。彼らが考えから事実に至れば、夜のあらゆることが成就する」 ![]() 野生の思考と近代思考の比較表 クリックで拡大 ![]() 具体科学の精緻 プトレマイオス天動説とエカント点 クリックで拡大 ![]() 具体科学の精緻、プトレマイオス 天動説、惑星の変速運動、 エカント点を解説した 頁に移動(図をクリック) |
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