M.Mead採取によるArapesh
族の
近親婚の戒め
Ta mere, ta soe
ur....
Tu ne peut manger
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 部族民通信ホームページ   開設元年6月10日 投稿2026年4月6日
 
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蕃神(ハカミ)義男

Les Structures Elémentaires de la Parenté親族の基本構造1 前文
 
   

近親婚の否定の証拠、古代DNA解析で証明される

202646日)レヴィストロースは「親族の基本構造、1947Mouton刊」で近親姦の禁忌について述べている。この禁忌は1)世界中どの民族にも見られる2)発覚した罰は厳しい―これらから相当の古代に発生したと語る。最新のDNA分析で旧石器時期の家族・バンド構成が明らかになった。

1西シベリアのスンギル遺跡、4人の合葬墓が発掘された。

2性別、年齢等は不明だがいとこ以内の近親性は発見されなかった。

 

ホモ・サピエンス再発見(ポールベティット著、篠田訳、創元社刊、右)を引用する。「一つの遺跡で同時期に生活していたと分かる複数個体の骨が必要になる。この条件を満たすサンプルの一つがロシアのスンギル遺跡(34千年~35千年前)、隣接する墓に4人が埋葬され、他の数人の骨が散らばった状態で発見された。古代DNA分析ではいとこ、曽祖父母までの関係を特定でき、スンギル遺跡ではいとこ、曽祖父よりも近い関係がないことが明らかにされた。交際相手と出会う機械が比較的限られていた氷河期の小集団としては驚くべき結果と言える。各集団は小さなブループ内で交配していたが、近親交配が進まないよう、バンド(小集団)同士で接触が維持されていたことが分かる。このデータは現代データと矛盾しない。現代の狩猟採取民は200人規模の交際相手集団と接触があり、どの小さなバンドをとっても三親等以内の血液関係にある個体は10%程度であることがデータで示唆されている。氷河期の先祖たちは配偶者選択のためのネットワークは常にオープンでなければならないと認識していた。古代DNA分析の見事な手柄である(150頁)」

レヴィストロースは新石器革命で人間の文化が開花したと言う。前記の「古くから」は少なくとも新石器以前、ヒトがより生物学的に生活していた時期からの禁忌と主張する。その主張が証明された事となるが、不明に残された事項も指摘できる。

未開社会では近親関係での婚姻を防止するため推奨婚制度が一般的である。多くで交叉いとこ(父の姉妹、母の兄弟の子同士)が推奨される。同時に嫁(婿)の交換制度が確立する。嫁をもらったらその娘は相手に贈らなければ関係が継続しない。

またいとこより近い近親関係は、近親婚となり否定される。いとこより遠い関係では財(女子には採取権、男子には狩猟権)が遠い継承となってバンドに残らない。いわば近親姦の禁止と相続は一体化して社会制度を形成するが、その場合いとこがバンドを構成することに繋がる。スンギルのDNA解析ではいとこは発見できなかった。

4人、成人には親子関係もいとこ関係も見いだせなかった。するとバンドの構成は近親関係が主体ではない。小バンドに成体が減って維持できない、他バンドに吸収される。その逆もあろう。この柔軟性は現代(と言っても90~100年前)には報告された(悲しき熱帯、Nambikwara族の報告など)。「ネットワークは常にオープン」は狩猟採取民の知恵であろう。(2026年4月に加筆

 







スンギル遺跡の場所

親族の基本構造
第2版(1967年)
 

レヴィストロース著Les Structures Élémentaires de la Parente親族の基本構造(初版1947年、改訂版1963年)の解説を試みる。本書(手元にある改訂版、初版を増補して570頁)は大作。先住民諸族の「親族」の意味、伴うしきたり、制度の運用が紹介される。本紹介では部族の個々の挿話は追わず、親族構造の基本概念と制度に焦点を絞る。

第一部は導入Introduction、2章に分かれNature et Culture 自然と文化、近親婚の問題 第2部は限定交換(L’échange restreint)構成する賞名は交換の基礎限定交換 規則の世界、族内婚と族外婚 互酬性の原理 二重構造 古代という幻想 同盟と系統 イトコ婚について。その後にオーストラリア先住民(アボリジニ)の特定部族の制度に入る。複雑で精緻、興味深いのでこれを紹介する(Murnginのシステム)。ここまでで半分ほどとなります。残り半分は各地先住民の民族誌に詳しい方の領域となり紹介は試みない。

 
基本構造1リンク
基本構造2
基本構造3
基本構造4
基本構造5
基本構造6
基本構造7


親族構造のプレゼン1(限定交換PDF)
アンドレヴェイユの数値による親族解析


ショートムービー(5分)

Youtube動画(10分)
Youtubeに入ってyrb_h8d5bjaで検索
 

背景:

著作の経緯。初版の出版は1947年、レヴィストロースは1940から45年まで米国に亡命していた。この間、英語圏の民族誌資料に接し、米国の民族学者とも交流を持った。構造言語学の旗手ヤコブソンと邂逅し、言語構造の概念を伝授されたと巷間に伝わる。終戦と共に帰国。温めていた主題、構造から文化を説明する新たな民族学の手法を盛り込み本書をまとめた。構造人類学の嚆矢。

自然と文化、近親婚禁止;

親族制度の始まりを近親婚禁止として、その発生を「自然生活」時期と想定する。レヴィストロースは自然状況を説明しないが、これを「小バンド」家族バンド時期、新石器革命以前と想定する。バンド生活を営む中で「父と娘」「母と息子」「兄弟姉妹」の通婚は禁止されていた。禁止しないとバンドは崩壊するーこの逆説説明が成り立つ。さらに傍証に「世界あらゆる部族、民族に」近親婚の禁止という教条、普遍性が認められる。いかなる人類も家族バンドの時期を経過しているから、その時期に固定した慣習をヒトすべてがひきつぎ、倫理として持ち続けている。

 
本書の書名頁
 

交換:

交換が婚姻制度の活力を裏打ちする。娘を嫁、息子を婿として他系統に与える、近親婚の禁止にかならず付随する仕組みとなります。与える側は自系統の維持のために嫁ないし婿を貰う。与え貰う流れが2の系統だけで完結する仕組みを「限定交換」と規定する。

系統がいくつか集まるとこの「限定」を一般化する(傾向が民族誌で見られる)。その仕組はA系統がB系統に送り、BCに、CDにと送りが流れ、XAにで円環経路が閉じる。これを一般化交換と名付けた。

交換を通して嫁、婿のみならず財が移動する。嫁が携える財は「家事、什器、衣服などの技術」。婿の財は労働力、もし移動採取の先住民であれば「猟の技術と権利」を婿が持ち込む。財を出しても受け取る。結果この循環が続く限り、どの系統も損得なし。財を自系統で抱え込むと部族の交流が断たれる。

近親婚禁止の裏側に交換の原理が控える、社会維持の知恵でもあります。

 

Prohibition、その訳語に「禁止」を取る。

Incesteインセストは日本語で近親()姦です。密通、私通の後ろ向き語感を受ける。その行為は禁忌破りとして忌み嫌われる。本書でレヴィストロースは行為としてのincesteを語っていない。婚姻制度が規定する「近親」の範囲内での結婚を制度で禁止する。故に「近親婚の禁止」を採用します。邦訳本(青弓社)はincesteを近親相姦としprohibitionを「禁忌」としている。「禁忌」を訳語とすると、著者の問いかけから離れる。

 
  2023年9月15日投稿