| 部族民通信ホームページ 開設元年6月10日 投稿2021年2月28日 |
![]() ボロロ族酋長 悲しき熱帯より |
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サイト主宰 蕃神(ハカミ)義男 |
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| 親族の基本構造5 限定交換 | |||||||||
| 交叉いとこ婚は先住民に特有ではない。欧州諸国で実践されている。ダーウイン家とウエッジウッド(陶業)の例はダーウイン自身の告白で著名です。またジッドの「狭き門」主人公、アリサとジェロームは交叉いとこであり、ジッド自身も交叉いとこを妻に迎えた。西欧史家はこの事情を多く語らないが、ゲルマン人の風習を引き継いだとは容易に推測できる(cousin
germainゲルマンのいとこ)とは婚姻対象のいとこの意味。Ma cousine私のいとこちゃんとは落ちぶれ騎士が何とか資産持ちのいとこと結婚したく、甘く囁いた(HugoのNotre Dameの一節) |
レヴィストロース著の親族の基本構造(La structure élémentaire de la parenté)の紹介を続けます。限定交換の部の第ニ章 限定交換 限定交換の仕組みをワインのやり取りで説明している。 « La situation de deux étrangers qui se font face des deux côtés d’une table de restaurant à bon marché est banale et épisodique. Elle est cependant éminemment révélatrice, car elle offre en exemple, rare dans …中略…C’est de cette situation fugace, mais difficile., que l’échange du vin permet la situation. Il est une affirmation de bonne grâce, qui dissipe l’incertitude réciproque. Le vin offert appelle le vin rendu, cordialité exige la cordialité » (70頁) 訳:値の張らない食堂、相席テーブルの両端には見知らぬ人同士。よくある風景だが、この状況は色々と示唆をするものだ。なぜならこうした機会は他には見いだせないから。……中略の部分は「大方のフランス人は名を知らず、社会的位置など不明の相手を無視する慣習を持っているから。テーブルの相席はそうした相手と対面してしまう事となる。一瞬の出来事だけれど、この状況での対処が難しい」 そこでワインの交換が事情を和らげる。それが一種の好意の表しだから、互いが抱く不安を解消する。一勺のグラスワインが一杯のワイン返盃を呼ぶ。 婚姻の体系では; 嫁(婿)を他の系統に贈る、この行為を交換として、その手順から限定(restreint)と一般化(généralisé)に分けている。単純かつ交換機能を直鋭的に残す限定交換とは: « A côté, et au-delà, de l’échange étendu au sens restreint – c’est-à-dire où deux partenaires interviennent exclusivement -on peut concevoir un cycle moins immédiatement perceptible , précisément parce qu’il fait appel à une structure d’une plus grande complexité : c’est à lui que nous donnons le nom d’échange généralisé »(270頁) 訳:限定されている交換の意味合い、すなわち2 の排他的な協力集団が相対している場となる。その横、あるいは上部に、より複雑さを有する構造体である故、直ちに認識できないけれど循環相(cycle)が仕掛けられる。そちらをして「一般化した交換」と名付ける。 上引用は「一般化交換échange généralisé」の書き出しです(本書270頁)。この一文で限定及びそれに対峙(あるいは包括)する一般化交換のあらましが理解できる。 限定交換は ; 1 交換相手の限定。2の相対集団で実施される。いくつかの相対集団を組み合わせて複層化する例も見られる。決められた相対を外れての交換はできない 2 交換物の限定。交換の女の地位は明確に定められる。系統での娘であり、母や叔母、祖母は対象に採らない 3 制度による限定。交換の循環相は頻繁かつ短経由。 書き出しの文; « l’individu reçoit toujours plus ce qu’il ne donne, et en même temps il donne plus qu’il ne reçoit » (同)人は与えるよりも多く受け取り同時に受け取るよりも多く与えるものである。 常に不等価、これが交換。先に示した近親婚とあわせてこれを本書解読の2の基準点とする。前述の繰り返しながら再掲;交換の理念を語ると、不等価、不均衡。不利と有利、それを経時的ないし循環で補償する
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交換(婚姻に限らず)は不等価で交わされる。限定交換では共時で不等価、贈るだけ貰うだけ、は不均衡を招く。それを経時で(貰った側が贈る)と均衡に是正される。貰った側はその利得を返す責務を負う。嫁をもらった側が「100万円出すからチャラ」には決してなりません。責務なしは売り買い、Transactionです。 レヴィストロースは世代再生産(子を生む)行動と「婚姻」を比較する ; « La nature, comme la culture, opère selon le double rythme de recevoir et de donner. Mais les deux moments de ce rythme, tel que le reproduit la nature, ne sont pas indifférents aux yeux de la culture : devant la première période, celle de recevoir, qui s’exprime à travers la parenté biologique, la culture est impuissante : l’hérédité d’un enfant est intégralement inscrite au sein des véhicules par les parents » (35頁) 訳:自然も文化と同じく、与える受ける、の2拍子で展開する。しかし自然の拍子を観察すると、文化のそれとは同質ではないと気づく。一拍子目、「受ける」を前にすると、それは親の生物的資質の伝承そのものだが、文化はこの過程では無力感に打たれる。子の形質は親からの引き継ぎであって、それ以上のものではない(自然は親から受けたモノ、遺伝子、と同量を子に与える)。 「同盟=文化が作った婚姻形体」を考えると…. « l’alliance est aussi exigée par la nature que la filiation » (同) 同盟にしても系統と同様に自然に制約を受けるのではあるが、(以下は原文なし)その活動は同じ様態(manière)でも同じ尺度(mesure)でもない。なぜならば自然での同盟の選び方(動物が番相手を探す)とは、種の枠の制約は受けるものの、規定なしである。自然は個体おのおのに両親から引き継ぐ決定因子を決めるだけである。同盟選びに「制約なし」を自然は課している。 « L’hérédité est envisagée du point de vue de la nature, doublement nécessaire : d’abord comme la loi – il n’y a pas de génération spontanée – ensuite comme la spécification de la loi : car la nature ne dit pas seulement qu’il faut avoir des parents mais aussi que vous serez semblables à eux » (同) 遺伝とは2重の必要性に成り立つ。その1は法則、突然に出現する世代はない(必ず親を必要とする)。2番は子が親に似るという法則の取り決めである。 « Au contraire en ce qui concerne l’alliance, la nature se contente d’affirmer la loi, mais elle est indifférente à son contenu » (36頁)(自然における)同盟の意味合いとは自然は法則を肯定するのみに満足し、その内容には無頓着である。 この後; (原文なし) 両親と子の関係とは子が両親の資質を受け継ぐけれど、男と女(=原文はmâle et femelle雄と雌。femelleメスは滅多に用いられない侮蔑語、生物学を語っているので許される)の関係は偶然と慨然性に支配される。 確認の意味で; 生殖行動、世代再生産にまつわる、人がそこから抜け出られない「自然性」をレヴィストロースは問いかけている。人の生殖を「つがう」として分析しているとも解釈できる。 Allianceについて解説する前述(内容に無頓着とある)のくだりは、自然の観点から見た同盟(男女間)の評価である。次世代の出現(子が生まれる)と遺伝は生物学法則に規定される。同盟(男と女の結びつき)の中身は自然は「種の制約」以外には、ゴリラはゴリラと豚は豚と番う、どうでも良い。人のして男も女も子への期待はあろうが、子は親に似ている。これのみで子の遺伝中身を制御する技能を人(文化)は持たないーと伝え掛けている。さらに、 « le caractère arbitraire de l’alliance qu’il (ilはle rapport entre mâle et femelle) se manifeste » (同) 男と女の関係の偶発性を加えている。 なぜことさら本章(規則の宇宙)にて世代再生産での自然的側面を述べたのだろうか。これまで(序章Introduction)の記載と絡めて文化面から再生産活動をまとめると; 1 近親婚禁止はヒトの自然状態の時期(旧石器)に発生した。自然由来。 2 その時期の婚姻は近親を除く一点が自然(動物界)と異なるが、番相手を見つけ再生産するという自然の行為に変わりがない(想像を含む)。 3 嫁探しを効率よくするために制度を生み出した。Filiation系統とAlliance同盟、文化を持ち込んだとも言える。「交換」の定理が生まれた(行き当たりばったり、略奪婚は効率悪い)。 |
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続ける、 « Or, si on admet, en accord avec l’évidence, une antériorité historique de la nature par rapport à la culture, ce peut être seulement grâce aux possibilités laissées ouvertes par la première que la seconde a pu insérer sa marque et introduire ses exigences propres » (36頁) 自然が文化よりも歴史では先行している事は確かだから、突き詰めると前者(自然)が後者(文化)に可能性を空けていたと言える。それが後者の記号(sa marque)を自然(動物行動)に織り込むのを許し、それ自身の仕組み(ses exigences propres)を導入するを可能さしめたのである。 堅苦しい訳になった、自然から文化が抜け出したのならその誕生には文化としての意味合いと仕掛けがあるはずだ。もし文化に独自性が薄く前者自然と似通っているならば、文化存立の価値はない。こんな至極当然を言っているのだが、御大からのご託宣ならば深い意味を感じてしまう、修辞です。 « si on admet, en accord avec l’évidence, une antériorité historique de la nature par rapport à la culture… » かつそれ自身(文化)の仕組み (ses exigences propres) を (自然に )導入するを可能さしめたに他ならない。 自然は遺伝(hérédité)に執着し続け、文化は「系統と同盟」の規則を創造した(marque)との意味です。 « Ainsi se résout l’apparente contradiction entre le caractère de règle de la prohibition et son universalité. Elle exprime seulement le fait que la culture a, toujours et partout, empli cette forme vide, comme une source jaillissante… » (37頁) (近親婚)禁止の社会規則(の多様性)とその原理の汎人類性の矛盾はかく解決に至る。汎人類性とは文化は泉であり、周囲空隙に絶やさず水を満たす事実(le fait)を表現している。 子は親から生まれる、「遺伝なる」生物の現象に文化は全く無力であるけれど、系統を確定し同盟を特定することはできる。ここに婚姻規則、近親婚禁止が誕生し、文化の灯に照らされる社会が創造された。 自然未踏の新天地に文化が課した強制(exigences)とは規則であった。ここに基準点の1(近親婚禁止が文化を形成)の具体的発展が見えている。 ここで、 系列と同盟の導入は2番目の原点(不等価交換)といかなる関連で重なるのだろうか。 系列同盟の規則が進展してゆく。その中で実行される女の交換が実は、不等価不均等で、緊張を継続的に生み出す。不等価とは女を贈っても、受け取る側からは何も返礼はない。豚や魚を売るときにはモノに等価の金銭を受け取るが、これは交換でなく取引Transaction。女を贈って女を貰うまでは不等価のやり取りであり、交換がもたらす緊張、これが交換の原理です。 (嫁の返礼として牛3頭とかブタ5匹とかを支払うしきたりはある。しかしそれら禽獣を束ねても女の一人に等価と言えない。次世代再生産が系統維持の大原則である、ブタや牛どもはヒトの系統再生産ができっこない) 自然の2拍子垂直交換(親から貰い子に渡す)をヒトの2拍子(相手に贈り相手から貰う)水平交換に変革すべく新石器革命が文化大革命を勃発させた。2拍子論での自然、文化比較は続く。 « Le domaine de la nature se caractérise en ceci qu’on n’y donne que ce qu’on reçoit. Le phénomène de l’hérédité exprime cette permanence et cette continuité. Dans le domaine de la culture, au contraire, l’individu reçoit toujours plus ce qu’il ne donne, et en même temps, il donne plus qu’il ne reçoit. =中略=Il n’est certes pas dans notre pensée de suggérer ici que les phénomènes vitaux doivent être considères comme de phénomènes d’équilibre ; le contraire est manifestement vrai » (35頁) 訳:自然の事象は受け取る分だけ与えるといえる。遺伝の流れはまさにこの様態を連続性の流れで見せている。文化はこの逆であって、個は与える以上に貰う。同時に貰う以上に与える。平等をもってするが社会を強固に形成すると私達は念じているかもしれないが、その正逆こそ明らかに(manifestement)正しいのだ。 (部族民解釈として:限定交換でA系統がB系統に嫁を贈った。B系統は必ずA系統に嫁を返す仕組みだから、嫁対嫁の「等価交換」であろうと、時間差という不均衡を発生させる。この不均衡が社会維持の原動力だ) 文化の存在理由(raison d’être)を明確にする。 « Car si la nature abandonne l’alliance au hasard à l’arbitraire, il est impossible à la culture de ne pas introduire un ordre, de quelque nature qu’il soit, là où il n’en existe pas »(37頁)自然は偶発的同盟を勝手気ままの選択に追いやっているのだから、文化が規則を導入しないわけにはいかない。(もともとは)なにがしかの自然状態であったかもしれぬが、文化が入り込めばその領域には必ず制度が介入する。(37頁) 本投稿(限定交換3=l’univers de règle規則の宇宙)をまとめる; 1 文化の世代再生産での規則性の導入(自然は勝手気ままに番う) 2 交換を通じての継続性(自然は平等交換なのだから不均衡が生じない、一回限り) 具体的に文化とは; 1 系統を決め同盟を結ぶ仕組み(配偶者は勝手気ままに選べない)。 2 交換に不等価を導き入れ、必ず両の関係に不均衡をわだかまらせた。 親族の基本構造4に戻る |
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