部族民通信ホームページ   開設元年6月10日 投稿2021年3月15日
主宰蕃神(ハカミ)義男        部族民通信  ホームページに 人類学のページに  
親族の基本構造6 族内婚族外婚  







EmileDurkheimの写真(ネットで採取)フランス社会学の創始者1858~1917年フランス)。日本では南方熊楠(1867年生)に近い。柳田国男(1875年生)の1世代前。古めかしい感を否めないが、本書「親族...」の刊行が74年前、当時は「トーテム信仰、血の汚れ...」説もそれなりに影響を保っていたと理解する。
 

限定交換の部第2Endogamie et Exogamie族内婚族外婚に入ります(著作全体を通しては第4章)。

これまでは近親婚の禁止、交換の原理、それら2の理念を制度化する工程(規則の宇宙の章)。ここまでがレヴィストロースの親族人類学の「理念」とすると、「族外婚、族内婚」以降は想定(シミレーション)となります。仕組み制度はいかなる思想のもとに働くか、この説明方法を取ります。「一般的」人類学は制度、仕組みの外形(機能)起源などを説明するが、レヴィストロースは思考を話します。

この手法は英米系人類学者から「抽象化しすぎ」の批判を招きました。改定増補版の本文中には、出版後さらに輩出するであろう批判を想定した「先制的」が散見される。これらは割愛した。

冒頭の一文;

 « Le groupe affirme son droit de regard sur ce qu’il considère légitimement comme une valeur essentielle. Il refuse de sanctionner l’inégalité naturelle de la distribution des sexes au sein des familles, et établit, sur le seul fondement possible, la liberté d’accès aux femmes du groupe, reconnue à tous les individus » 49頁)

訳:(遵守すべき一般規則を確立した後)集団の構成員は規則にかなったと考えるところのものを基本的価値と認めるに至る。すると家族内の性分布の不平等に気づき、これを不当と感じる。行き着く先はただ一つ、集団中の女性への接近の自由である。

 « Ce fondement est le suivant : que ni l’état de fraternité ni celui de paternité ne peuvent être invoqués pour revendiquer une épouse , mais que cette revendication vaut seulement au titre par lequel tous les hommes se trouvent égaux dans leur compétition pour toutes les femmes : celui de leurs relations respectives définies en terme de groupe , et non pas de famille » (同)

訳:この行き着く先(規則の基礎)は以下の通り。兄弟、あるいは父親であったとしてもその親族特権で(家族内から)妻を得ることはできない。妻を求めるには家族を越えた集団の範囲となり、集団内の妻問い競争では全員が同じ立場で参加しなければならない。

 

2の引用でレヴィストロースは何を語るのか。

前回「L’univers de règle規則の宇宙」で家族(系統)内の女性を近親とみなし、婚姻の対象としない。これを原初の規則とした。(身近で自由にできる筈の)女は他家族へ嫁ぐことになる。父権兄弟権なる特権があってもそれを家族内でそれを婚姻の具にしてはならない。これをしてレヴィストロースは「家族内の性的不平等、前引用文にあるl’inégalité…des familles」と伝える。ここで彼は女の手当範囲として、家族(系列)を囲むグループ(集団)なる概念を導入する。この系列を異にするも集団に属する女、それら対象すべてへの接近が許される。

それら女性には集団内の男すべてが同じく接近可能となる。

父、兄弟の特権を否定する規則がまず策定された。その規則の結果、男のすべてがすべての女に接近できる別の制度を生むことにつながる。

 

« Cette règle se montre avantageuse pour les individus, puisqu’en les obligeant à renoncer à un lot de femmes immédiatement disponibles, mais limité ou même très restreint, elle ouvre à tous un droit de revendication sur un nombre de femmes dont la disponibilité est différée par les exigences de la coutume, mais qui est théoriquement aussi élevée que possible, et qui est le même pour tous »

訳:しかるにこの規則は個々には冒険的とみなされる。なぜなら限定され数も少ないけれどすぐに可能なはずの女性群との婚姻を禁止され、その代わりに一定数の女への妻問いの道が開かれる。理論的にはそちらのほうが数は多いけれど、慣習の違いやらで可能性はそれぞれのうえ、他の誰にでも接近が許されている(それだけ競争が厳しい)のだから。

 

上写真は北米先住民Arapesh族の言い伝え。本書章題ページのデジカメ

一つの制度(近親婚の禁止)が立ち上がっても、その制度は過酷な競争を個に課す。成り立つかに疑問が生じる(とレヴィストロースは思考する)。男の全員が妻問い競争での対敵者、この社会は効率が悪い。婚姻できない範疇を決める制度のみでは社会が成り立たない。もう一つの制度、婚姻すべき対象を特定する制度が必要となる。

 

« En effet les règles du mariage ne font pas toujours qu’interdire un cercle de parenté : parfois aussi , elles en assignent un , à l’intérieur duquel le mariage doit nécessairement avoir lieu , sous peine de provoquer un scandale du même type que celui qui résulterait de violation de la prohibition elle-même » (53)

訳:婚姻規則は必ずしも親族間の交流を常に禁止するものではない。時には親族内部でも特定の関係ならば可能たらしめる場合もある。それが(他の社会では)近親婚の禁止破りとされる危険を犯しても。

続く文は;

« Deux cas sont à distinguer ici; d’une part l’endogamie, d’autre part l’union préférentiellec'est-à- dire l’obligation de se marier à l’intérieur d’un groupe défini objectivement dans le premier cas , et , dans le second, l’obligation de choisir pour conjoint un individu qui présente avec le sujet un rapport de parenté déterminé »

訳:この場合には2の可能性を推定できる。その1は族内婚、もう一つは優先組み合わせ。前者は具体的に規定されている集団の内部でのみ結婚を可能とする。後者では特定の近親関係にあるもの同士を優先させる制度である。

 

この後の文で「systèmes classificatoires de parenté親族の分類体系」から「優先préférentiel=婚姻の優先規定」(前回、2番目の可能性)を求めることは難しいとしている。その意味は「優先婚」なる言葉も、その関係を表す親族用語も(先住民の用語に)見つけられない事情を意味する。結婚前に優先権を公示する「婚約者いいなづけfiancé」なる語はどの民族にもあるだろうが、これは対外にその地位を示す目的にあり、親族用語とは異なる(蕃神の解釈)。

特定の係累関係にあれば必ず「将来婚姻」が設定され、「いいなづけ」に対応しかつ親族用語とする語がそれに当たるが、知る限り日本語にはない。いずれかの民族でこの婚姻優先を示す親族用語が存在するかもしれない、乞うご指摘。

この優先婚préférentielの概念は「一般的」人類学者から「予約婚prescrit」と反論された。その意味合いは係累関係から自律的に優先を決める(これが優先婚)ではない。個別的事情、親族関係ではなく経済あるいは地縁などの判断から、個と個の婚姻を予約する慣習であるとの指摘である(第2版の序章で取り上げられている)。

基本構造1リンク
基本構造2
基本構造3
基本構造4
基本構造5
基本構造6
基本構造7


親族構造のプレゼン1(限定交換PDF)
アンドレヴェイユの数値による親族解析


ショートムービー(5分)

Youtube動画(10分)
Youtubeに入ってyrb_h8d5bjaで検索

   

上図=再掲は自然から文化への発展は決して一直線に進んだ流れではないを、レヴィストロースの思想を汲んで、概念的にまとめた。 

ヴィストロースは「経済、地理的」条件には踏み込まず族内で、近親の意味を持つ親族用語が即「優先」として特定される慣習は多いと述べるにとどまる。

族内婚(第一の可能性)は親族関係の仕組みから優先婚姻を規定する制度となる。多くの民族が交差いとこの婚姻を推奨している。族内婚自体は規定としてより緩やか、優先婚(交差いとこ婚など)は規定としてより厳格な範囲で運用する。

そうした意味合いと理解した。

 

« Ainsi, tout système de mariage entre cousins croises pourrait être interprété comme un système endogamique, si tous les individus, cousins parallèles entre eux, se trouvaient désignés par un même terme, et tous les individus, cousins croises entre eux, par un terme différent »

訳:交差いとこ婚とは一つの族内婚として評価できる。なぜなら平行いとこを言い表す用語が統一されているとして、そうした場合、交差いとこは別の言葉を用いることになるから。

ここで;

平行いとことは父の兄弟(あるいは母の姉妹)の子女。交差いとこは父の姉妹(母の兄弟)のそれら。先住多くの民族では両者に異なる用語体系を用意している。呼称におけるいとこ峻別の意味についてレヴィストロースの説明は;

« Cette double appellation pourrait même subsister postérieurement à la disparition du système matrimonial considéré et, comme conséquence, un système exogamique par excellence ferait place à un nouveau système qui présenterait au contraire toutes les apparences de l’endogamie » (53)

訳:この2重の呼称は一の婚姻規定が消滅したあとも、用語のみが残ったと解釈できないだろうか。どのような過程かといえばかつて厳格な族外婚が機能していて、それが新たな体系、全く異なる様相をみせる族内婚に取り替わった名残であろうか。

(この文意は前の系統とは婚姻できず族外の女性を娶る(族外婚)があったが、族内婚に変容したレヴィストロースの主張を言い換えている。ただし動詞は仮定法現在を用いるので、推測を含ませた文意となる)

 
   

上の2の引用の意味合いを探る。

原初の族外の婚姻体系については前節(Introduction)で説明している。それが族内婚に入れ替わった。「特定の近親関係にある女」との組み合わせを、制度として採り入れた。

レヴィストロースが語る中身とは「いとこに対する2通りの区別呼称が族内婚への変遷の証拠である」にほかならない。2の呼称と外婚から内婚への変遷、このつながりを以下に考える:かつて族外婚では交差いとこも平行も近親であった、両者に親族呼称がある事はそれが婚姻の対象にならない表れであると。

後に(男全員が競争相手なる不合理を避けるために)conversion factice人工的置換過程(後述)を経て、交差いとこを婚姻優先させる族内婚に切り替わったと読みたい。レヴィストロース頭の中がこの論理だった。

 

婚姻体系の変遷、レヴィストロース流の解釈。まとめると

そもそも族外婚制度のみが厳格に維持されていた。その制度は一人女を多数男の「妻問い」競争に晒し、男同士の争い激化が族民社会の損失と知るに至って<conversion factice>人工的展開を経て、族内で近親ながらも交差いとことの婚姻を認めたとの推察である。交差いとこに優先権を与え、外野野郎からの「粉かけ」を防ぐ制度に練り上げた。いとこ呼称に区別があること自体が、族外から族内婚への発展の証拠であると。

 

「正統」族外婚から族内婚に。この過程をfactice人工とレヴィストロースは形容するが、理由は「いとこ系統」を創生する人工作業に尽きる、並行いとこを系統内に残し婚姻できないままに置く。交差いとこを系統外に「人工的に」放逐し見せかけの族外者とすれば婚姻できる。この判定では生物学的、あるいは続柄の遠近を考慮していない。人工的に「父の姉妹の娘」との婚姻を優先すると決めただけである。そしてここには族外婚の系統集団をより大きな族集団が囲み、その集団の単位で族内婚を実践するに至る工程に取り込まれる。

族外婚の実践から始まって妥協として族内婚を採り入れた族民の思考を想定(シミレーション)となります。証明は難しいでしょう。

 

族内婚の成立過程2の基準点とは1近親婚の禁止 2交換は不等価

これら原理がどのようにして部族社会を形成したかを再現する。

スライド1は表紙。スライド2,3,4は過去投稿(限定交換の上下)で説明している。

 

スライド5は同4の集団の女交換の依存が固定化した状況を示す。系統A,Bともに族外婚集団で、ABを合わせて族内婚集団となる。

6番目スライドは過去作成。5の内婚集団は交差イトコ婚を通している。交差イトコの原理を系統図にて表した。

 

先住民多くは生活技術の取得で男と女を区別している。女が採取耕作、家事の技術を持ちそれに関連する財産を所有する。男は儀礼、狩猟、対外に従事する。技術、地位は父から息子へと伝授される。交差イトコ婚はそうした技能、財産の分散あるいは寡占おそれから除外できる。この仕組みを図式化した。

7番目の図は婚姻の理念、制度と交換のそれらが重なり合い、社会を維持、変革誌、交差イトコ婚と限定交換の様を表している。

 

このスライド内容が本書前半の60頁文のまとめとなります。

序章(introduction)で近親婚の禁止という理念を確立した。系統(filiation)を決め、族外婚制をとる。

「近親婚の禁止」それに連なる「系列、外婚集団」と「同盟、女の手当」の創成となります。これも文化です。スライド最終の列には族内外婚を包括する集団と不等価交換を巡回させる集団(交差イトコ婚)を位置づけました。交差イトコ婚は貰ったら贈る、贈らないと貰えない、すなわち限定交換の「交換様態の限定」モードを実現した制度です。本投稿で限定交換、その概念説明を終了いたします。

 

族内婚族外婚の章4了(2021517日)

 
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